6月21日(土)第229回例会

1. じゃれマガカルチャー⑱ What’s Cold and Sweet?

文法項目の一覧化と指導の工夫

  • 文法一覧表の作成と活用
    参加者全員が「自分の使用教科書のどこでどの文法が扱われているか」を把握するために、3学年分の文法一覧表を作成しておくべきである。教科書改訂により文法の扱いが変化しているため、「この文法は2年のどこで習った?」と生徒に問いかけることで、文法用語を使わずに学習場面を想起させる指導が生徒に寄り添う形となる。
  • 文法用語を使わない説明
    「不定詞の副詞的用法」なども、「toをandに変えて意味が変わらなかったらそれ」といった簡単な説明で十分であり、難しい専門用語を使うことは避ける。

即興発話活動と文化的視点

  • 即興発話の実践
    「Which do you like better in summer, ice cream or shaved ice?」「How often do you eat them in summer?」「What do you think is the best place for eating shaved ice?」などの問いかけを用い、ペアで競い合いながら発話する。
  • 外国人への説明タスク
    「アイスとかき氷」「わらび餅」について、外国人に自分の経験を交えて説明するタスクを設定し、本文の語句や表現を使いながら一人一文ずつ説明する。特に「わらび餅」の説明では、原料や作り方、カロリーなどの知識が必要で、教師自身も学び続ける必要性を感じたという声が多かった。
  • 文化的・語彙的視点
    英米表現の違い(line up/queue)、actuallyの使い方、French Line Paperなど。

2. 「中学生から始める英語フォニックス指導」②

第1章 中学生からフォニックス指導を始める前に

1⃣ 小学校外国語科の音声指導の現状

  • 教科書分析と現状認識
    小学校の教科書を分析し、アルファベットの形・音の知識や、意味を伴った音声インプットが不十分ながらも行われている現状を共有。5・6年生用教科書では、アルファベットの大文字・小文字や初頭音、hard/soft c・g (class, girlはhardであり、practice, gestureはsoftである)などの扱いがあるが、明示的なフォニックス指導は少ない。

2⃣ 中学校新入生の実態調査 Can-Do リスト

  • Can-Doリストの活用
    北原先生考案のCan-Doリストを用いて、生徒の入学時点での英語力を把握する。年度当初と年度末にCan-Doリストで自己評価させ、成長を可視化する。
  • 小学校からの情報収集
    小学校の先生に聴き取りを行い、実際にどこまで何を扱ったかを確認することで、中学校での指導に活かしている先生もいた。

2-1 アルファベット書写指導 音→文字

  • bとdの書き間違いの背景と指導法
    筆記体指導の減少がbとdの書き間違い増加の要因とされ、筆記体の成り立ちや、指を使って形を掴む方法、両手グーでbとdを作る指導法などが紹介された。
  • 左利き生徒への配慮
    左利き生徒にはノートを斜めにするなどのアドバイスが有効であり、書きづらさへの理解も必要だとされた。
  • 字が汚い生徒への指導
    他の文字と混同しない程度であればよしとし、たくさん書かせて慣れさせる指導、ライティングノートが紹介された。
  • 4線ノートの活用
    「1階」「2階」「地下1階」などの文字の位置把握を助ける工夫は北原先生が考案。

2-2 アルファベットの定着

  • アルファベット迷路・大文字小文字つなぎゲーム
    検定教科書や北原先生オリジナルのアルファベット迷路、大文字小文字つなぎゲーム。他人との競争ではなく「前回の自分」との戦いというルールが生徒のモチベーションを高める。

2-3 入学直後からの発音指導

  • NHK「わくわく授業」
    ジェスチャーや歌を取り入れた発音指導。手鏡やタブレットのカメラで口や舌の形を確認させる指導が効果的。
  • 歌唱活動の活用
    Carpentersの「Top of the World」などの洋楽を用い、音の連結(liaison)、脱落(elision)、同化(assimilation)、弱化(reduction)を意識させながら歌唱・音読する活動。歌詞に印をつけながら聞くことで意識が高まる。
  • 発音指導の徹底
    発音チェックの際は「今まで一度もチェックで引っかからなかったら立たなくていいよ」といった声かけで時間短縮し、できない生徒にフォーカスする。

第2章 中学生から始めるフォニックス指導

1⃣ フォニックスとは

  • フォニックスの本質
    フォニックスは「聞こえるけど読めない」生徒のための指導法であり、音声インプットが不十分な日本人には、必要なルールに絞った指導が有効。
  • 2つのフォニックス
    analytic phonics(既知の単語から推測、ABC順)とsynthetic phonics(文字の音声化スキル獲得、頻度の高い順)があることを理解しておく。

2⃣ 中学生から始めるフォニックス

  • 網羅的に教えない
    全てのルールを教えようとせず、出現頻度の高いものだけをしっかり指導することが重要。「発音できれば書ける」を生徒に実感させる。
  • 単語テストより発音指導
    単語テストよりも発音指導を重視することで、生徒の自信や学習意欲が高まる。
  • 高校入試の採点基準
    高校入試の英作文採点では、スペルミスよりも語順や構文の正確さが重視される傾向がある。

3⃣ 発音ごとのアルファベット指導とクイズの詳細

  • クイズの実施方法
    北原先生は、教室で提示できる大きなカードを用意し、表に大文字、裏に小文字を記載。カードは色分けされており、例えばクイズ1(B C D G P T V Z)は赤色など、グループごとに色分けされていた。
  • クイズ内容と進め方
    1. 先生がカードを見せて「このグループの共通点は何?」と問いかける。
    2. 生徒たちはグループで相談し、発音や音の特徴を考える。
    3. 例えば「B C D G P T V Z」は「/i:/の母音が含まれている」など、音声的な特徴に気づかせる。
    4. 「F L M N S X」では「/e/の音で始まる」、「A E I O U」は「発音が2種類ある」、「J K」は「エイの音が入っている」など、各グループの特徴を当てさせる。
    5. クイズ形式でテンポよく進め、正解したら拍手や「よく気づいたね!」と声かけ。間違えても「惜しい!」など励ましながら進行する。
  • 活動の工夫
    生徒が後ろの席で見えない場合は、前の生徒がしゃがんで見やすくするなど、自然な協力が生まれる場面を作る。
    クイズは「気づき」を重視し、音に注目させて自分で発見させることが大切である。アルファベット順で教えるのではなく、音の特徴ごとにグループ分けすることで、生徒が自分で音を出しやすくなり、学びやすさが向上する。

4⃣ 日本語にない子音(consonant)の指導

  • th, f, v, r, lなどの徹底指導
    日本語にない子音は特に丁寧に、しつこく繰り返し指導する必要がある。「thはベロを歯でかんで、隙間から息を出す。ベロが相手から見えなければだめ」という北原先生の説明。
  • 音声学の本との比較
    音声学の本や大人向けの発音指導書の説明と比較し、中学生に分かりやすい言葉で指導することが大切である。

参考文献・教材・指導法の紹介

  • 竹林滋先生の「英語のフォニックス 綴り字と発音のルール」
  • 松香フォニックス
  • 浜島書店の「Word Flash」(北研HPからダウンロード可能)

まとめ

  • 音声重視の授業づくり生徒の実態把握必要最小限のルールに絞ったフォニックス指導が、北研の研修会を通して参加者全員に共通するキーメッセージであった。
  • 即興発話活動歌・ジェスチャーを使った発音練習Can-Doリストによる到達度の可視化など、日々の授業にすぐに活かせる具体的な実践例が多数共有された。
  • 「できる」体験の積み重ね生徒の目線に立った説明・活動設計が、英語力の底上げと学習意欲の向上につながることが改めて確認された。