2016年4月16日 北研例会第131回復活11回 例会報告

1 劇Friends鑑賞
北研メンバーでも3月に公演した劇Friendsを3作品鑑賞しました。

①ロシア人による日本語バージョン
とても不思議な感じがしました。日本語を話しているのですから、意味はもちろんわかるのですが、とても不自然な印象です。「当然じゃないか」「あつかましい」「苺のジャムを少々」…などのセリフも、普段自分たちの話し言葉に比べて違和感があります。棒読み、とは少し違う、イントネーションの不自然さ、と言うのでしょうか。自分たちが話す英語も、ネイティブにはこのように聞こえているのかな、と思いました。

→アクセント?が不自然
→今はそんな言い回ししないよな~という表現が結構出てきた
→自分たち(日本人)も外国人からはこんなふうに見えているのだろうか・・・(恥)

セリフが聞き取りづらく感じました。私たち日本人の話す英語は,ネイティブにはどう聞こえているのだろうかと思いました。発音やイントネーションを,CDやネイティブの話すものに近づけていくことが,語学習得には有効なのだろうと思いました。

所々は日本語に聞こえますが、「日本語だ」と意識して聞いていてもなかなか言葉をキャッチするのは難しかったです。日本語の正しい発音やイントネーションができて相手に伝わる言葉になるのだと感じました。私も日常でALTに単語を聞き間違えられることがありますが、発音が正しくなかったり、日本語に近い音になったりアクセントがうまく言えないと、このように不自然な言葉として受け取られてしまうのだと思いました。
②赤坂中3年生バージョン

何度見させていただいても、生徒さん達の英語力や演技力には驚きます。特に好きなシーンは、manが逃げた後最後に全員で帰り支度をするところです。スポットライトの下で、全員がバランスよく動き、観客を飽きさせない演技をしています。特に、宝塚に合格した長女役の方はさすがで、慌てる様子を様々な動きで表していました。生徒の英語劇をする時はまず、学年で一番力があり、みんなを抑えることができ、信頼のある子をディレクターにするそうです。

永遠にわたしたちの一番のライバルであり、目標であり、わかりあえる仲間の芝居です。北原先生プロデユースで、同じ芝居を作り上げるという苦労、楽しさ、意義や恩恵もわかちあったFRIENDSです。だからこそ、3月5日の私たちの芝居の一番のサポーターとなってくれました。こうした思いは、一生変わらないと思います。「北原先生の仲間である先生たちが、赤坂中で、おんなじ芝居に挑戦してくれた」生徒にとっても、インパクトのある出来事だったと思います。自分たちが演じ終えた今、演技力、英語力、集中力のすごさなどを改めて痛感しました。生徒版FRIENDSの特徴は、「元気さ、いきのよさ」「スピード感、パワー」「発音」「間が短い」です。中学生の心拍数と、大人の心拍数は違いますから、スピード感に違いが出るのも当然と思います。年代によって、「心地よい」と感じる発話のスピードは異なります。

→発音が良い(even every thなど完璧)
→語彙が豊富
→見入ってしまう
→演技もできている・言葉がないとき(しゃべってないとき)の演技が上手!!!
→自分の言葉みたいに話せている

「素晴らしい」の一言につきます。北原先生がこの劇をやろうと決めたとき,同僚の先生からは「無理」と言われたそうですが,「生徒の力を信じて,やろうと決めた」と話されていました。信じてあげることで,生徒の可能性はどんどん広がっていくのだと思いました。

③北研教師バージョン
演出と役者が違うと、このように変わってくるのか、という印象を受けました。主人公のMANも、中学生と北研住友先生が演じるのとでは、キャラクターが違います。全体的に、中学生バージョン(若さゆえ?)、転んだりぶつかったりの体当たりの演技でコミカルなものでした。北研バージョンは、シリアスな大人の演技で、言葉や言い方で表現することも多かったように感じます。音楽も、MANにパジャマを着せるシーンや帰り支度をするシーンでは、中学生バージョンはドタバタアップテンポの曲、北研バージョンでは落ち着きのあるゆっくりとした曲が使われており、印象が違いました。

私は北研教師バージョンで母親役をさせて頂きました。それで実は、何か参考になるものはないか?と2月くらいにyoutubeで検索して、ロシア人バージョンを見つけ、途中まで見ていた(途中で眠くなり止めました)ので、今回2回目の鑑賞でした。しかし確かに日本語ではあるのですが、古い言葉遣いのせいなのか、イントネーションのせいなのか、発音のせいなのか、動きがあまりないせいなのか、言葉があまりにも聞き取りづらく、内容を知ってはいても意味がわかりにくかったです。私達の英語も、イントネーションや発音、動きのせいでこのようにわかりにくい印象を与えないようにしたいと思いました。赤坂中学校のバージョンは何度も見せて頂いたのですが、発音や流暢さはピカイチで、中学生らしく元気いっぱい、コミカルでpinch&auchが素晴らしく、明るい印象でした。また、MAN役の生徒さんは慶応高校に、長女役の生徒さんは宝塚音楽学校に(27倍の倍率を勝ち抜いて合格!)、ディレクターをした生徒さんは都立日比谷高校(都内で1、2位の公立高校)に推薦で入ったとのこと。素晴らしい人生のスタートを赤坂中学校で切り、そのような生徒たちを育成することが出来る北原先生は改めてすごい教育者だなあと思いました。北研教師バージョンは途中数々のpinch & pinchを乗り越え、最後まで演じ終えましたが、鑑賞して頂いた先生方に、「わかりやすかった」「たった5回の練習でここまで演じるとは素晴らしく感動しました」「音楽や演じる人でここまで雰囲気が違うのだなあと思いました」などの感想を頂きました。私も母親役を演じるにあたり、せっかく中学生よりは母親という実年齢に近い?役を演じるのだから、母親らしく見えるような動きをするのを心がけました。英語に関しては発音やイントネーションに気をつけました。劇では普通の会話より極端と言えるほどオーバーに抑揚をつけてセリフを言いました。とにかく前を向いて話すことにより、やっとそれらしく聞こえるのだと大変勉強になりました。新しいサンシャインにはスキットを作る部分もあるので、今回学んだことをあてはめていきたいです。

・ロシア人による日本語は、分かりにくいところが多かった。アクセントなど。主役のmanはよかったが、
後ろの登場人物たちの動きがほとんどなかった。
・赤坂中の生徒はさすがに、発音、演技など抜群。1年のころから日本語劇などでも鍛えられている演技力だと理解できる。
・生徒と先生たちの劇を比較すると、生徒・・・元気、スピード感、発音の良さ、先生たち・・・大人のいやらしさがよく出ている。北原先生からは、「もともと大人の劇だから人生長いですからセリフに意味がこもっている」と。 また、ディレクターからもコメントがありました。・タケカワユキヒデさんのNight Timeという曲。 ・舞台は「本番の魔物がいる」 ・通し稽古はたったの5回。照明は1、2回しか練習していない。 ・プロンプターの必要性。

鑑賞後、北原先生が、今回初めて観た人を選んで感想を求めましたが、皆さん同じ意見でした。そして北原先生が、1つには監督の方針の違い:北原先生はスピード感、テンポり・リズム重視の演出、一方教師バージョンの監督、H先生は、ご自身でも言われていましたが、大人ゆえの、人生経験がにじみ出る重厚感?重視(BGMもすべてゆったりしたものがえらばれた)、そしてもう一つは、人生経験の差であろう、とおっしゃり、なるほど、演劇の深さ、というものを垣間見た気がし、有り難いとおもいました。これにつづき、北原先生が、これまでの英語演劇指導のポイントをお話しくださいました。まず、directorにふさわしい、全体をまとめる力のある生徒を、こちらから人選すること。あわせて、この子こそ、この役にはまり役だ、と思う生徒を一人一人。また、これまで「戦争物」を演目に選んできたが、今回は、「とてもパワーのある大人っぽいことが好きな学年なので」今回の「Friends」という大人向けの不条理劇を選んだと。北原メソッドは、子どもの発達段階に留意して内容や活動を仕組む、と学びましたが、このようにそのときどきの生徒の様子を的確に把握されていることに、確かに支えられてあの英語力が付くのだな、と感じました。

演出担当に決まったとき、最初から、生徒さんとテンポやリズム、音楽演出をがらりと変えたミュージカル版の芝居で、「大人のバージョン」にしようと思いました。すぐに音源CDをたくさんとりよせ、新幹線の行きかえりに、タケカワさんのCD10枚ほどを聴き、劇中に使う音楽を選びました。(半年間、新幹線での行きかえりと駅周辺での時間が、演出として一番集中して作業ができる時間でした)スローバラード中心の音楽演出にして、この劇のおどろしさを出したいと思いました。一番いたましい、Manを縛り上げるところで、この世で一番美しいバラードを背景に使いました。北研当日も、芝居を観た先生方から、こんな意見をいただきました。「先生たちの芝居、セリフのほうがよくわかった」「言葉に対する身振り、手振り、芝居がわかりやすかった」「演技により思いがこめられていた」ありがたいコメントをいただきました。日頃から仕事で忙しい大人の先生たちが、たった5回だけの通し稽古で、英語劇を形にしていくという奇跡的なことを私たちはやりました。並大抵の思いや作業ではありませんでした。FRINEDの芝居という世界にある時期、全身全霊をささげて、ひとつのプロジェクトを完成させました。教師である私たちがそうしてできたという事実、体験できたという事実は、私たち自身や、北研のみなさん、そして子供たちの事実のために、とても意義のあることだったと思います。当日の劇を観てくれた、友人で演劇評論家の上野火山さんは、コメントしました。「その空間には、ただただ、英語に対する愛情と、演劇に対するリスペクトがありました。ぼくは、その空間の中で、ぼくのいた原点に戻ることができました。とてもあたたかな空気に包まれた、さわやかな空間でした」

→さすが大人!
→生徒たちほど体当たりな演技ではないけれど大人の演技の方が分かりやすい
→言葉に対する身振り、手振りがいい!
→言葉を話している以外のときの動きが難しかったそうです
2 生徒のパフォーマンス映像鑑賞
①1年生3学期 スキット「電話」→次回鑑賞します。
②2年生3学期 「トーク&トーク」(正進社)を使った即興スキット今後求められてくる「即興力」が問われるものです。映像は、スキットというより、生徒一人が北原先生やALTに日本の学校を紹介するものでした。”Akasaka Junior High School has three terms.”や”don’t have to”など、積み重なった言語材料をアウトプットします。この活動でも、ジェスチャーを多用している生徒が多くいました。

正進社 トーク・アンド・トーク Book2 School Systemsを使って、即興で学校事情について英語で説明をしていました。感想などつけ加えたいことがあれば、自由に書き足しましょう。というお題です。
1 学期について
2 通学方法について
3 掃除について
4 昼食について
5 制服について
6 放課後の活動について
の6項目から選んで、即興の英語で説明をしていました。ときどき、文法をALTや先生に指摘されてはいましたが、見事に話していました。なによりも語順間違えがなく、英語で考えているなあという印象でした。即興力が問われている今、時代に合った活動ですが、ここに至るように育てるところが、さすがだなあと思います。

③2年生3学期 スピーキングテスト「場面と人間関係を選んで対話」(「幹」の本テスト編243ページ参照)教科書の題材を基に、登場人物になったつもりで2分間ALTと会話します。例)Severn Suzukiになったつもりで国連で環境問題についてスピーチをする、ユキになったつもりでフィンランドに旅行計画を話す、など。単なる教科書の暗記だけでなく、きちんと理解し、自分の言葉にすることが求められます。
生徒たちは、何も見ずにジェスチャーをつけてALTと会話していました。ある生徒は、”There are~.”のthの発音をきちんと意識していました。職場体験について会話をした生徒は、英語が出ないときでも身振り手振りで一生懸命伝えようとしていました。また、北原先生もおっしゃっていましたが、ALTの会話の引き出し方が素晴らしかったです。ALT自身が教科書の内容をきちんと把握していなければ、あのような質問の仕方はできないと思います。私たち英語教員が、ALTに求めていること、してほしいことを正確に伝えていくことが大切です。(そのためには、自分自身に英語教員としての英語力が必要です。)

ある人物になりきります。場面と人間関係を選んで2分間、対話をするというお題です。
セヴァン・カリス=スズキ、阪神大震災、職業体験などをALTに語っていました。すべて、サンシャインの教科書にある題材です。教科書の内容があり、暗記し、それを自分のものにしている状態です。このような教科書の文をアウトプットさせる活動は大切だと感じました。そしてALTのみごとな返し。絶妙な合いの手を入れて、会話を引きだしています。Cool.    Ummm….    OK.     Nice.    I  belive you.に加え、  Can  you  see ?   Can  you  dance ?   などの質問も飛び出します。そして、質問にも答えます。
また、質問に相手が反応しない(おそらく知らない表現が混ざっている) と、別の表現で言い換えて質問をしていました。ALTに伝え、協力して育てていくことはとても大切だと感じています。

○即興的なスピーチ
→ALT:生徒からの話の引き出し方がすごく上手!
→生徒が話すとき身振り手振りを忘れていなかった
○幹本テスト編P244を参考に
→誰か偉人になってスピーチをする
●勉強になったこと(たくさんあるが特に)●
→上位の子は教科書の本文を理解した上で自分の言葉で話せる・教科書の言葉をうまく使っている
→中位の子はwhyなどと聞かれると止まってしまうことがあった。
しかしその止まってしまっていても日本語→英語という発想でなくしっかり英語で考えていた。(手振りがそれを語っている)

ALTの先生の相づち、リアクション、が見事に生徒を不安や緊張から開放していく姿が
見て取れました。映ってはいませんが、ALTの顔の表情もきっと、良いのでしょう。すべての
生徒に笑顔がありました。

こうした雰囲気、テストだけど、テストじゃない。ALTだけど、先生じゃない雰囲気が作られていました。つまり、生徒は英語を使ってコミュニケーションをしている感覚になっているように見えました。これらを引き出しながら、生徒の反応を見てすぐに質問内容や単語を言い換えているALTの先生の力は素晴らしいと感じました。北原先生からは、ALTの先生が、最初からこのようなことができたわけはない。そして、我々がALTを育てていかなければいけないという言葉がありました。

 

場面と人物設定を1つ選び,その人物になりきって2分間ALTと会話をするテストです。
ALTのコメントや相づち,突っ込みが素晴らしかったです。生徒が話すことを,知らないふりをしてさらに生徒から引き出させたり,伝わらない言葉はすぐに言い換えたり…。ALTを育てることも,私たち英語教師の役目なのですが,自分はうまくできていません。北原先生からは,前のALTのビデオを見せたり,生徒への突っ込み方を教えたりするとよい,というお話をいただきました。

2)平成27年度2年生3学期 Talk & Talkを使った即興スキット
“Talk & Talk” p.39掲載のSchool Systemに掲載された学校生活にかかわる項目を英語で紹介していました。
3)平成27年度2年生3学期 スピーキングテスト「場面と人間関係を選んで対話」
「幹の本(テスト編)7章2年3学期」pp.243-244 参照
(「幹の本」ではNEW CROWNバージョンで書かれていますが、映像はSUNSHINEの教科書で実施されています。)
教科書本文や素材を活用し、暗唱ではなく自分の言葉として使って、決められた役を演じる形でテストを実施していました。
4)平成28年度新入生歓迎会(旧2年生による英語劇”Tea Break”)
12月の長野のセミナーでTea Breakを練習、演じるところまで実際に取り組みましたが、ここでも、また大人の劇、中学生の劇、それぞれ違った良さがあると感じましたが、やはり赤坂中の生徒さんたちの台詞の掛け合いのテンポの良さ、スピードは北原先生の指導の中で鍛えられた賜物だと思います。長野のセミナーでの練習中も、台詞で間が空かないように、前の台詞が終わったら、次の役者はかぶせるように続けて行くように注意を受けたことを思い出しました。上記の2)3)では、ALTの協力が必要な活動になりますが、日本人の英語教員がALTを育てることも大切であることを北原先生がお話しされていました。生徒のTalkに対して、ALTのつっこみ方、引き出し方で、次の展開が変わってくるところもあり、日頃の授業での発問とも重なりますが、生徒が話しやすい、答えやすい質問をその場で用意できることも、授業力の一要因であると、改めて感じました。

2.平成27年度2年生3学期 スピーキングテスト「場面と人間関係を選んで対話」
過去にも同じスピーキングテストの映像を見せていただきましたが、先輩たちにも劣らない素晴らしい内容でした。教科書の本文を使っている部分でも、単なる暗唱ではなく、英文を自分のものにして、自分の考えのように話しています。また、ALTが見事に生徒から話を引き出したり、生徒の反応を見てすぐに質問を言い換えていました。北原先生からは「最初からこのようなことができたわけはない」ということ「我々がALTを育てていかなければいけない」というお話をいただきました。

3.平成28年度新入生歓迎会 旧2年生による英語劇Tea Break
新入生に対して「ゴールを見せる」(インパクトを与える)という目的がある。こういう場を設けることは、新入生はもちろん、機会を与えられた新2年生、3年生にとってもさらに成長する場になる、と思いました。部活動や委員会の紹介だけで終わっている本校の歓迎会もさらに工夫をして、このような機会を与えてやりたいと思いました。

 

3 データを取ろう
北原先生が私たちに話してくださったことが、心に残りました。「北原メソッドとは北原実践の追試のみならず、その理念を生かした指導法すべてを指す。」①まずは、北原先生のされていることをコピーする。
②そして、先生の理念(理論、データをとる、生徒の目線で)に基づいて授業を作る。

北原先生が2・3年生に配った「後輩に伝える役に立った授業と自分の勉強法」(研修会用セレクト版)が紹介されていました。(上述の「理念」の③にあたるもの)新学年で配り、自分がいいと思う勉強法をマーキングさせているそうです。いくつか紹介します。

発音      じゃれマガや教科書など先生方の発音をよく聞く。
発音はすべてに通ずる。
早いうちから発音を定着させるべき。
Siriに聞き取らせて、聞き取ってくれるまでやる。
音読      何も見ずにいえるのは、35~45回くらい読んだ時。 みんなもそれくらい読もう。
北原先生がいつも言っていたように文法を音で覚えることができるので、
音読はとても大切。
文法      Basic Dialogは本当に便利。
あれを骨組みと考えれば複雑な分も肉付けしてうまくいきます。
宿題      英語は宿題を正しく意欲をもってすれば、一番得点が上がる教科だと思う。
先生が出す宿題っていうのは、できないものはないので、 ちゃんとやるべき。
パフォーマンス スキットは、チームで作る。
内容が濃いほど、一生の思い出になっていきます。
とにかく、先生がふだん生徒にどんな指導をしているか、どんな声掛けをしているかが、この生徒の声を読むと立体的に見えてきます。生徒の声とデータ(数値)がかみ合ってメソッドが構築されることがよくわかりました。自分でも、この「後輩に伝える~」をやりました。パソコンでベタ打ちしていると、すごく時間がかかります。でも、生徒が自分の伝えたかったことを自分のものにしているととてもうれしくて、疲れも吹っ飛びます。と同時に、打ち込みながら、自分の指導法を見直すこともできて、振り返りのいい時間になります。生徒との信頼関係もよくなります。時間はかかりますが、力がつくので、まだやっていない方はぜひやってみてください。

「北原メソッドとは北研実践の追試のみならずその理念を生かした指導法すべてを指す」
①理論(効果的指導法) ②データをとり、活用する ③アンケートなどのフィードバックから子ども目線でアクティビティを選択する。この3つを外さないこと。具体的に実施するにあたり、北原先生の指導をそのまま実践することが、北原メソッドの授業実践を行う一番簡単な方法であるが、上記①②③を心得ていれば、北原メソッドであるとお話しされていました。教室現場や授業自体が、複雑な要因を含み、理論と実践のずれがどうしても起こってしまうものですが、やはり生徒に取り組ませ、力を伸ばしていくためには、生徒理解に根ざした指導が必要であり、英語指導に①~③どれも必要不可欠だと思います。
①3年生の学年末テスト(辞書持ち込み)
問題は,「I先生への手紙」または「北原先生への手紙」でした。生徒の書いた英文の数は,最も多い生徒で46文でした。以下のそれぞれを生徒に書かせ,データを取っています。
・英和辞典と和英辞典の使用頻度
・主にどのように書いたか
・なぜこんなに書けるようになったか。書く力になった授業の活動や授業外の学習法
・書けなかった理由
このように生徒に書いてもらうことは,授業改善にとても役に立つと思いました。
4 最近の実践から
「3」と関連するとよいのですが、昨年度末に「新1年生に贈る『英語はこうやって勉強しよう』」を現在の2年生に書いてもらいました。生徒たちは、実に一生懸命書いてくれました。自分自身の春休みの宿題として、117名全員のコメントをエクセルにまとめることを生徒に伝えました。予想以上の時間がかかりました。結果、30ページにも及ぶ大作となりましたが、自分自身が一番勉強になったかもしれません。
たとえば、マーカーひとつにしても、気になったところにマーキングするという生徒もいれば、マーキングしすぎるとゴチャゴチャしてわかりづらいので、できるだけシンプルにと言う生徒もいます。また、「蛍光ペンは濃い色だと字が読みにくくなるので、薄い色がオススメ」というコメントもありました。うれしかったのは、ほとんどの生徒が音読(箱読み)と辞書の大切さを書いていたことです。

英文を書いた文の数が一番多い生徒で 46文でした。すごいスピードです。そして、書きたいことがあったからこそこんなに書くことができたのですね。私もやってみたのですが、36人3クラス。採点が死にそうでした。失敗したのが、解答のコピーをとらなかったことです。生徒に「採点大変だったでしょう。」とねぎらってもらいました。赤坂中ほどではありませんが、20文以上書いた子が半分以上いました。しかし、中には  I  love you.   I  like  English.  と途中から苦し紛れになっている生徒もいて、笑いながら採点しました。北原先生のように、データで残しておかなかったので、後悔しています。なるほどこのようにアンケートをとればよかったと思いました。

「おもにどういうふうに書きましたか?」という質問に対して「頭にある英語をそのまま書いた」という生徒が多数→基本的な英文が身についているのでこんなに書けるのだと思いました。 書けなかった子で、スペルが不確かでそれをいちいち辞書でひいて、時間を大量に使ってしまった子がいたそうです。それをしなければもっと文を書けたのにー・・・もったいないです。

いくつか紹介させていただきます。
・私は辞書をよく活用しました。パラパラ見ていると、面白い言葉や「あっ」という単語が見つかります。
・先生の言ったことをしっかりノートに書く。これもとっても大切なことですが、英語の授業でもっと大切なのは「聞くこと」だと思います。発音は何もしなくて上手になるわけがありません。聞くだけでなく、さらにそのまま口から声を出してみることが大切です。はじめは上手くいかないと思います。それでも少し「格好をつける」くらいがちょうどいいと思います。恥ずかしがっていてはいけません!
・中学校に入学する弟が、強く英語に関心があって、ぼくは教えながら勉強しています。「自分が人に教えることができること」は、しっかり理解していることであって、そのような面で自信が持てるようになります。人に教えられないことは、自分がわからないことです。英語は結局は対話なので、一人よりもだれかと勉強した方が身につく、というのが、ぼくの正直な考えです。
・教科書の箱読みは、先生の言われた数の倍以上、家でした方がいいよ!ぼくは、それを実行して、教科書の文の暗記や理解がよくできたよ。
エクセルでまとめたものは、英語科の先生方と書いてくれた生徒にも配布しました。生徒たちは、仲間たちが書いたコメントを熱心に読んでいました。

今回は資料として、②に関連する、27年度卒業生の書いた「後輩に伝える役に立った授業と自分の勉強法(「これをやるといいよ!」)を、北原先生がカテゴリーごとにソートしたものを頂きました。(辞書・英語の歌・発音・音読・文法・宿題・テスト・ライティングノート・パフォーマンス・長文・積極性・過去問・リーディング・リスニング・スピーキング・ライティング・語い・ベーシックダイアログ・その他)まず、この分類の多さに驚きました。生徒の記述をこれだけ細かく分けるのは容易ではありません。さらに、「北原先生も特におすすめの勉強法」には波線が引いてあります。年度初めに後輩(新1~3年生)に配布します。自分の生徒の記述と比較し、参考になるものがたくさんありました。その記述の中で、「その他」の項目に合った2人の文が目に留まりました。

「・先生の言うことは信じて下さい。信じることはとても大切です。また過去の先輩たちが言ってきたことは「自分にもできる」のだと思ってください。同じ中学生がやってるんですから。」
「・北原先生は赤中で一番優しい先生だと思います。厳しさこそ愛です。」
1つ目の文章は、赤坂中の後輩だけでなく、日本中の中学生にも言えることだと思います。私が初めて北原先生の授業を見させて頂いたときに「同じ中学生がこんなことできるのか」と衝撃的だったのを覚えています。北原先生は以前「うちの生徒には無理、というのは生徒に失礼」とおっしゃっていました。今回も生徒のパフォーマンスビデオを見させて頂きましたが、ただ、「すごい」で終わるのではなく、「自分の生徒にもできる」と信じ、実践し、データを取り生徒の声を聞いていくことを繰り返していきたいと思いました。2つ目については、北原先生は、生徒だけでなく、私達北研参加者に対しても、厳しいです。しかし、職場によっては、相手のために厳しいことを言うという場面や関係がないことも少なくないと思います。生徒に対しても同様です。生徒から湧き出た「厳しさこそ愛」と言う言葉が心に残りました。