11月16日(土)第222回の北研はキャスティングディレクターを筆頭に多くの肩書を持つ奈良橋陽子さんを迎えての特別な会になりました。また、奈良橋さん以外にも素敵なゲストがいましたので、レポートにて紹介いたします。
まず、奈良橋陽子さんと大学時代に関りがあり、奈良橋さんが主宰する演劇集団MPにも参加したことがある北研会員のレポートを紹介します。
〇奈良橋陽子先生
東京外国語大学1年を終えた春、イギリスから戻ってからすぐに、私は奈良橋陽子先生が主宰する「東京の大学生のための演劇集団、MP(モデルプロダクション)」のオーディションを受けて、陽子先生の演劇指導を受けながら、東京全域100名の学生たちと3か月間、みっちり「英語だけを話す生活」「毎日東京中の大学を回りながら、3か月間英語でリハーサルする生活」にどっぷり浸りました。タフな毎日でした。シャイで男の子とも話せない自分が、初日に「100名の学生とハグし、お互いの目を見つめ合って、お互いのfirst impressionを語り合う」大きなBreakthroughを体験しました。今回の陽子先生のレッスンは、MPの初レッスンとよく似ていました。私はそのときに、「自己を表現すること」「人と関わり合うこと」「英語で生活し演技を楽しむ」ことを学びました。この日の出会いがなかったら、いま生き生きと英語を話し、生徒に教え、北研に学ぶ私はいませんでした。私にとって、陽子先生が「人生最大、最高の英語の先生」であり、二人目が「北原先生」となりました。大学を卒業して入った教育系出版社は、偶然にも、陽子先生がカリキュラムと英語の絵本を作り、タケさんが曲を作り、夫だったジョニーさんがプロデユーサーをつとめ、ときにタケさんから会社に電話がくるようなおもしろい会社で、奇跡のような2度目の再会がありました。この10年間は、歴代MPメンバーの同窓会(タケカワさん、中村雅俊さん、鈴木亮平さん、加藤雅也さん、寺泉憲さん、藤田朋子さんetc)や、亡くなった仲間やスタッフをしのぶ会などで何度か陽子先生と再会しました。そのたびに、先生が身近に感じられました。そして今回の講演会がまたうれしい再会の日となりました。会うたびに、若い30代のころの美しさやエネルギーはそのままに、まわりのすべての人への愛やあたたかさがあふれていました。人には、それぞれもって生まれた「役割」「役目」があるように思います。陽子先生は、多くの学生に英語で表現をする楽しさに目覚めさせ、motivationを与え、学生や役者を「人生の中で最も輝かせる」という最高にすてきなミッションをもった方だと思います。その思いにそそぐ「愛」や「思い」「やさしさ」には限りがない。当時のMPで出会ったスタッフ、ディレクター、役者さんの何名かは、残念なことに志を半ばにpassed awayされた仲間がいます。そうした方たちにそそぐ陽子さんの思いにははかり知れない思いがあり、何度かそうした時を一緒に過ごさせてもらい、楽しい時間も、悲しみも、仲間とともにわかちあってきたように思います。今回の講演の中で、陽子先生はその中のひとりの俳優、塩屋のりゆきさんについて深い思いをめぐらせ、私の質問の中で鈴木亮平さんを育てた先輩俳優として「のりゆき」と何度も言及されていました。陽子先生にとって、人生でかかわったすべての人が愛情の対象になっているのだと思います。私にもやはり「役割」があるように思います。大学での恩師、陽子先生やディレクター、北原先生、「師」というべき方たちの教育への深い思いを深い愛情や情熱とともにいただいた分、日々の英語教育の中で生かしていくことが、自身の「First Mission」です。もうひとつは、人と人をつないでいく「コーディネイター」の役割です。日ごろから、北原先生が「会いたい、会いたい」と願ってやまない、もうひとりのすてきなゲストをいつか何とかしてお迎えしたいと願っていますが、今回がその一番近い最高のチャンスだと思いました。タケさんが一番頭があがらない仲良しが、陽子先生と奥様だからです。懇親会の席で、すばやく陽子先生に、「タケさんと最近連絡とっていますか」「できたら、タケさんに北研にゲストとしてお呼びしたいのですが、コンタクトをとってもらえますか」とたずねると、陽子先生は快く「連絡とってます。電話で聞いてみるから、たぶん大丈夫だと思う。いつがいいですか。4月? 5月?」と気さくに応じてくださいました。「連絡がとれたらあなたにメールしますね」と言ってくれました。お二人とも日々大変忙しい日程だと思います。来春以降に「大きなもうひとつの夢」が実現するのを楽しみに待つことにしましょう!また、わたしは陽子先生に「陽子先生が日本の大学生たちに演劇を教え、舞台を作ってきた歴史を、みんなで共有できるレガシーとして、整理をして体系化し、多くの人たちに見てもらえる形にしませんか」と提案をさせてもらっています。陽子先生はとても喜んで神楽坂にあるオフィス兼ご自宅に招いてくださいました。ちょうどコロナ直前の頃、陽子先生が19歳のICUの大学生だったころ、MP第1期生として遠山顕さんと初演した舞台から、今日のMPの舞台に至るまで、陽子先生所蔵の写真や資料を、全部一緒に整理をして袋詰めをして片づけました。夢中で取り組んだその作業の中で、先生の英語劇の恩師、Richard Via氏への思い、学生たちと舞台にかける思いの強さ、記憶力のすごさを感じました。英語の編集者として、若いころから陽子先生と縁をいただいた自分が貢献できる「役割」を感じたからです。MPの組織や歴史は巨大で果てしなく、一朝一夕にとはいきませんが、陽子先生と素材の準備はしたので、いつかこれらがみんなの目に留まる形になるとき、「MPの全歴史、全部の舞台」が見られる日が来るのを楽しみにしている次第です。会のあと、先生をお見送りしました。先生は白い素敵なベンツに乗ったあとも、窓をあけて優しく手をとってくれ、再会を約束してお別れしました。今回、北研のみなさんのエネルギー、志の熱い思いに、陽子先生もとてもうれしく感じ入ったのではないでしょうか。
〇今回のすてきなゲストおふたり
*北原先生が大学1年のとき、MPメソッド、English through Dramaメソッドでドラマ「Friends」をディレクションされた須田あけみさん。「須田センパイ」と呼ばせていただきました。初対面で「Friendsのディレクターをされた方ですね」と言ってもらったのがとてもうれしく親しみがわきました。「Friends」のすてきな主題歌「Night Time」は、大学演劇のときに、須田さんがタケさんにオファーして作ってもらったものとのことでした。今でもタケカワさんは、コンサートのアンコールのそのあとで、この歌を歌うがあります。タケさんにとっても、この歌の思い出は心の奥の奥にしまっておく、大切な思い出の歌なのだなと思いました。須田さんは、スイスでのお仕事の滞在歴が長く「来月12月のふつうの北研もみたいから、あなたの授業を見にきます。スイスでの経験もみなさんにいつかお話したいと思います」と言ってくださいました。とてもエレガントで素敵なセンパイでした。
*そして・・・北原先生が講演会までずっと秘密にしていたスペシャルゲストは、アメリカのテレビドラマ「SHOGUN」で日本人女性の強さと美しさを見事に具現化して見せてくれた俳優、鞠子役の「澤井アンナさん」のお父さんでした。アンナさんは、11歳の時、たくさんの候補の中から陽子先生が選んでキャスティングして、アメリカ映画「Ninja」にショー小杉さんと出演してデビューしたのだそうです。陽子先生が、たくさんのダイヤの原石の中から「この人」と選ぶ選択眼は、国際感覚と独自の洞察力と
審美眼による卓越した力によるものです。SHOGUNにおける鞠子さんは、日本女性の強さ、美しさを体の内面から放ち、「この人以外に鞠子役はいない」と思わせるほどの力をもったすてきな女優さんです。「将軍 SHOGUN」みなさんもうご覧になりましたか。私は4月ごろ、海外の英語の講師の先生に「絶対見て」と太鼓判で教えてもらい、瞬く間に「SHOGUN」の沼おちしました。まだの方は、1か月だけDisney+に入って(確か990円くらい)全作品ご覧ください。第一話は少し暗くてどろどろとしていて、難しい映画と思いますが、どんどん世界に引き込まれていきます。最後の薙刀での立ち回りはすさまじく、薙刀が折れてしまったほどで、家に帰ったらアンナさんは歯が欠けていたことに気づいたそうです。この映画で、真田広之さん、アンナさんたちのキャストを得て、ハリウッドの作品にして、日本人スタッフの演技を「日本語字幕で欧米の人たちが鑑賞する」~日本が欧米の文化に立ち並ぶ時を迎えるという、エポックとなった作品といえます。春から「この作品、アカデミーをとる」と確信しましたが、見事、アメリカのテレビ界のアカデミー賞、エミー賞を8部門にわたって独占するという栄誉を得ました。アンナさんのお父さんは、「いかにしてアンナさんを育てたか」というテーマでミニ・レクチャーをしてくれました。アンナさんは、AVEXの歌手として活動もしていましたが、そのころ日米親善野球の開会式に「アメリカ国家」を独唱しました。YOUTUBEで見られますが、アメリカのシンガー並みの歌のうまさにひきつけられます。ごらんください。
ここで、「MP」と「MLS」の違いについて、当日の配布資料も使いながら伝えます。予備知識を整理しておくと、話がわかりやすくなると思います。
〇MP(モデル・プロダクション)東京学生演劇連盟→参加対象は東京近郊の大学生。
年に一回の公演のために、東京中から集まった大学生たちがオーディション審査を経て、3か月間Only Englishだけで生活する中で英語と英語劇を学び、大会場で数回の英語のミュージカル、演劇を発表する英語劇集団、団体。ブロードウエイで数々のヒット作を手掛けていたRichard Via氏が日本に招聘されて立ち上げたプロジェクト。カナダから日本に戻りICUの大学生だった陽子先生は遠山顕さんらと参加。のちにVia氏が帰国後にMPを引き継ぎ、陽子先生の演劇活動のスタートとなった拠点。その指導法は、English Through Drama。オフ・ブロードウエイメソッドともいわれた。ドラマ作りを通して英語と国際的なコミュニケーションを学び、個人と日本人のバリアも越えてInternationalな人格形成をはかるもの。来日当初、陽子先生とともに「日本の大学生が英語で話す演劇」の様子を見たVia氏は、「あまりにひどい日本の大学生の英語」に大いに衝撃を受け「これは、日本の学生たちをなんとかしなければいけない!」と、英語劇を通して日本の大学生に生きた英語のコミュニケーションを学んでもらうプロジェクトを始動した。(前回お会いしたとき、Via氏とのMP創立当時の思い出をふりかえって、陽子先生が当時のVia氏のまねをしながら教えてくれました)私や北原先生の先輩の須田明美さん(現在は高山さん)が参加したのもMP。当時外大の1年生だった北原先生は須田ディレクターのもと、このメソッドに学んで「Friends」に参加。北原メソッドの土台となる英語劇も、北研の先生方と上演した萩ディレクションの「Friends」もすべて根底は同じこのEnglish Through Dramaメソッドで行いました。東京中の国立、私立、多くの学生がオーディションを経て参加。3か月間すべて英語で生活する中で、自然と英語でのコミュニケーションや自己表現が培われました。各大学ともESSからの参加者多数でした。(後輩に、一つ下の別所哲也、さらに下に藤田朋子、川平慈英、先輩に時任三郎、中村雅俊さんらがいました)代表作は、初期の「ヘアー」「ジーザス・クライスト スーパースター」「マジック・モンキー」など。この舞台のテーマソングのために、陽子先生とタケカワさんの名作「ガンダーラ」「モンキーマジック」の2つの楽曲が生まれました。当時、時々リハーサルを見に来てくれた陽子先生のそばには、いつも幼いリエナさんが一緒にいました。
〇UPS(アップス)(ユナイテッド・パフォーマンス・スタジオ)奈良橋陽子先生主宰→プロの役者を目指す演劇集団。
MP参加メンバーの中で、さらにあと2,3年専門的に演劇を学びたいと思い、陽子先生から声をかけられて選ばれた精鋭がここで学びます。(卒業生に川平慈英、オダギリジョー、今井雅之、塩屋俊(本名塩屋のりあき)他多数→鈴木亮平さんにその姿をもって役者道を教えたと、当日陽子先生が話していました)
〇MLS(モデル・ランゲージ・スタジオ)英語語学学校。対象参加者はこども~大人まで。
MPで出会った陽子先生と太田雅一氏が立ち上げた英語学校。現在、北研のM先生もMLSの公演練習に参加。1/5に「犬」役でデビューします。MPに参加していた時何度か立ち寄ったことがあります。当時、帰国子女は商社マンなど良家の子女が学び、こどもなのにおそろしく素晴らしい発音で話していました。
ここから奈良橋陽子さんのトークショーの内容のレポートになります。
〇Casting: Key points to consider when casting actors and more.
陽子先生がキャスティングした映画、かかわった映画、育てた俳優さんたち
Last Samurai(渡辺謙・真田広之さん)謙さんをハリウッド映画に出したら面白いんじゃないかと考えた陽子先生は、はじめてのハリウッド映画の大作で、日本人の役者が活躍する場を切り拓くために何年もかけて役者を監督に紹介し、ハリウッドで通じる英語の訓練も行いました。最初謙さんは英語が話せず、コミュニケーションも難航したが、陽子先生(と太田さんの奥様のクラウディア先生)が英語の訓練を行い、インタビューでもどんな英語を話せばよいかを訓練し、謙さんは受け答えの英語をすべて丸暗記で覚えた。謙さんは「英語ができるんじゃないか」と思われるくらい、英語が話せる日本人を演じきった。真田広之さんは、大変な勉強家で”Hard worker”。He studies English for 5 hours a day. 朝から晩まで英語を勉強して上達した。→SHOGUNの撮影時もスタッフやキャストたちと円滑にコミュニケーションし、チームワークを構築し、インタビューでも相手の話をよく聞き、求められた答えを流ちょうに話す姿がよく見られます。まさにListen&Talkのけいこの成果が垣間見えます。役者やスタッフ、コミッティー相手に「こう考えるから、これはこう変えてほしい」「これは絶対~したい、する」とプロヂューサーとして強い意見を伝えられるようになったのも、長い間の下積みを経た経験とListen&Talkで培った力が根幹にあったからなのだなと思いました。日本の女優として、ハリウッドでも活躍する菊池凛子さんも、陽子さんに選ばれて育てられた俳優のひとりです。
真田広之さんとは「HIRO]「YOKO」と呼び合う関係で、日本に帰国するたび一緒にランチをする仲だそうです。(懇親会談)
〇 Internationalな感覚をもつこと To become more international!
My love of drama never never changed. 陽子さんは力強く伝える。父の影響で小さいころからたくさんの映画を見て育った。5歳のとき外交官としてカナダに赴任する父に「おもしろそうだから一緒にカナダに追いていく」と自分で決めてカナダへ同行する。外交官の娘として、家にいろいろな国からのゲストがやってくるInternational partyが普通にあるInternationalな環境で育つ。幼いながら「これはいかがですか」と多国籍の人たちの間を回り、交流したことを今も忘れずに思い出す。「外交」とはEverybody’sPeaceのためのもの。その思想が陽子先生の根底にある。We are not just in Japan. We are a part of international part.
日本のこども、学生たちも、もっともっとInternationalな感覚をもって、外に出てほしいし、先生方もそうあってほしい。
〇本物のactingを見たとき、人の心は動く
役者の「役作り」の基本は「Listen&Talk」である。ただセリフを覚えて話す、読むのではない。「real moment of actor」その瞬間に湧き起こる感情を、伝えたいことをいっぱい相手に込めて伝える。相手が話すことをよく聞いて受け入れることで、心と心がふれあい、ドラマの中で「real moment」真実の瞬間が生まれる。観客は、舞台の上でのその「真実の一瞬」を楽しみに来る。一回一回変わっていく「心が動く、本物の瞬間」が大切だ。誰かに何かをしてほしいとき、人は何とかその人にわかってもらおうと、いろいろな方法、あらゆる方法でアプローチする。その瞬間はPinch&Ouchi。つねられたら痛い。つねられていないのに、痛いと言ったらそれはrealな芝居ではなくなる。覚えた台本を言うのが役者ではない。相手をよく見て聞いて、リアクションする。これが人の心を動かす。真のコミュニケーションである。
(→のちほど、ペアで相手の目をよく見つめて、言葉ではなく「こうしてほしい」という思いをこめて相手に伝え、相手を動かすエチュードを行った。言葉ではなく、相手をよく見て伝えるだけで、相手に気持ちが伝わった瞬間、参加者のだれもが大きな喜びを感じることができた)
〇 If each person realize I’m free. ~心を自由に開けば、人はもっと自由になり、夢をかなえることができる~
Heaven can waitは素晴らしいコメディドラマです。We can keep life is too amazing, how can we finish?
陽子先生のお話の中で、何度もいろいろな場面でamazingという言葉が出てきます。amazingを見つける力、amazingを感じる力って本当に大切なんだなあと思います。(みなさん、amazingしていますか?)
All of life, each one’s. 人生は、それぞれのものです。
たとえば、空を飛ぼうと考えたら、人は空を飛ぶこともできるんです。人の心は自由です。なんにだってなれるのです。
たとえば、自分のことを日記につけてみます。自分はどこにいくのかを日記につけてみます。
All acting is finding it. すべてのアクティングは、それを見つけるための旅です。
Actors work inside. If I were…, If I do this. If I can fly…countries. (←ピーターパンはまさにそうですね)
Beautiful things of drama. ドラマはこんなすてきなことができるんです。
→ドラマを創ることへの強い愛情、パッションが伝わり、心が自由にときはなたれるすてきな考え方だと思いませんか。
〇Speaking English is action how to communicate.
The ability of listen. これはとても大切です。多くの人たちはほとんど「自分のことを話そう」とばかり考え、相手や人の話を聞くことはあまりしません。でもコミュニケーションでは、「聞く力」がとても大切です。
→陽子先生はこの日、北原先生はじめ、参加者ひとりひとりの目を、愛情たっぷりのやさしい美しい目で見て、真剣に話を聞いて答えてくれていました。わたしは一人一人に真摯に向き合い、よく人の話を聞く陽子先生をずっと近くで拝見していました。
私たちの目は、陽子先生のように「相手の心や気持ちをよく見るために」あるのであって、私たちの耳は「相手の心をよく聞くために」あるのだと、あらためて思わされました。
〇QAタイム Answer to my question
「日本人は質問しませんね。先生たち、質問はありますか」陽子先生は挑むように質問を求めました。予想通りK先生が口火を切りました。私は最初に手をあげることはせず、2番、3番手になります。自分よりもっと勇気をもって「一番にこれが聞きたい」と思っている人が必ずいると思うので、まずは様子を見ます。会場の雰囲気を見て、だれもなかなか挙手しなそうなら、雰囲気作りのために2番手、3番手をつとめるようにしています。私のあとに、C先生、M先生が質問したのもさすがでした。そして予想通りの質問内容でした。Y先生がいたら、1,2番手だったかな。
When we met before, you said Ryohei Suzuki is so nice. Actually he is becoming more more popular. What is his good point?
(前回陽子先生のオフィスで会ったとき、鈴木亮平さんのポスターが貼ってあり、彼はとてもすばらしい俳優だ。ハリウッドに出ていくための英語の訓練もはじめている、と先生がいったので、その理由を知りたくて聞きました)
それは予想をこえて、陽子先生が育てた俳優さんたちへの深い思いやリスペクトに満ちたものでした。
亮平に身をもって俳優としての在り方、仕事を教えたのは、陽子さんの愛弟子の塩屋のりあきさん(芸名は改名してのちに塩屋俊:MP,UPSで陽子さんの薫陶を受け、役者、映画監督として先生の期待を担っていた若い俳優さんです)。亮平は先輩ののりあきから、俳優としてのいきざまを学んでいったのです。でも今彼は今忙しすぎて、今日はここ、明日はここと、目の回るような何本ものハードスケジュールをこなし、限界をこえた働き方をしているので、それがいいのかどうか。ハードワークに耐え抜く力、人を大切にする力も、のりあきを通して身につけています。亮平には「日本から飛び出して、外に(海外)出ていきなさい、と伝えているのだけれど、今はそれはできなそうですね」とのことでした。東京外大を卒業後、デモテープをもって20,30のプロダクションを回っても門前払いされていた亮平さんを、早くからその力を見抜き、センパイ俳優のもとにつけて大切に時間をかけて見守り育てたのが、陽子先生でした。亮平さんに限らず、まだ若く活躍されたのに病気で他界された塩屋のりあきさんと今井雅之さん、謙さんや真田広之さん、凛子さん、陽子さんは未来の名俳優に、長い時間、年月と愛情をもって細やかに接し育てられたのですね。それらの映画の撮影現場では、日米の文化感から来る摩擦やギャップ、トラブルに走り回って奔走して問題を円満解決に導いていたという、わが最初の師、奈良橋陽子先生を心から誇りに思います。
〇アンナ澤井を育てたパパのお話
商社マンとして世界をまわるお父さんも、おじいさんも、みなInternational Schoolに学んだInternational personでした。赴任地NZで生まれ、フィリピン、香港などで育ったアンナさんも「国際人に育ってほしい」と願う両親の考えのもと、それぞれの国のInternational Schoolで教育を受け、ネイティブの英語を身につけられたようです。「アメリカでNoと言える日本人」「アメリカのスタッフ、監督たちと堂々と自分の意志、主張を伝えることができ、相手の考えを聞ける日本人」International Actor、アンナ澤井さんはこのようにして大切にお父さんの思いを実現させ、今も今後も日本人俳優、日本人の映画人としてのポジションを築いたのだそうです。
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奈良橋陽子さんのトークショーは全て英語で行われました。そこに参加していたALTの先生がとても詳細なレポートを書いてくれているので、次に紹介します。
This is J V, ALT (R Corporation) in M City, Tokyo. I wish to thank Mr. Kitahara for letting me attend last Saturday’s special edition of Kitaken. I also would like to join everyone else in thanking all those who helped to prepare and organize the meeting: I先生, H先生, N先生,S中学校 staff and others. Your efforts helped to make the meeting possible.
What a rare treat it was to welcome the doyenne of Japanese casting directors, Ms. Yoko Narahashi! It was an occasion none of us will ever forget. And what an impressive speaker Ms. Narahashi is! Her manner of expression, the ease and naturalness of her demeanor, and the interest of her anecdotes had us all riveted. (As many here have observed, her tone of voice has a fruity, mesmerizing quality.) I think we would all agree that we could have listened to her for several more hours.
Note about my report: I paraphrase much of what I heard during Ms. Yoko’s talk (in other words, I don’t always directly quote her). Also, I hope I didn’t misidentify any of the names of the Japanese actors that Ms. Narahashi mentioned. If I did, I would be terribly embarrassed, but I hope I can be forgiven for my ignorance.
“Yoko Narahashi’s Talk Event at Kitaken”
Starring: YOKO NARAHASHI, Hollywood casting director, film producer, song lyricist, and honorary president of MLS (Model Language Studio)
With Special Guests: Mr. Masakazu Ota (MLS president), Mr. Sawai (father of Emmy award-winning actor Anna Sawai), and Ms. Suda (director of “Friends”).
【Topics】
(1) What international perspective is necessary for Japanese people?
(2) Key points to consider when casting actors and more.
(3) Acting exercises teachers can use in the classroom.
【The Scene】
the school library of S JHS (Tokyo); teachers and other attendees are chatting in anticipation of their distinguished guest; the music of Godiego (rock band for which Yoko-san has written lyrics in English) is playing in the background.
I. Mr. Ota Introduces Ms. Yoko Narahashi
II. Yoko-san Talks about the Rise of Japanese Actors & Films
1. Video reel (made by Yoko-san’s assistant) featuring clips from films/shows that she has worked on: “The Last Samurai, Memoirs of a Geisha, Babel, The Wolverine, Emperor, Unbroken, Tetris, Minamata, Giri/Haji, Monarch: Legacy of Monsters.”
2. Yoko-san begins by remarking on how popular Japan is now (as witness the daily influx of tourists!) and how the present moment is a “preparatory” time for J-films and actors — their presence on the international stage is becoming more marked (“Godzilla Minus One” garnered an Academy Award for Best Visual Effects last year).
3. Yoko-san is a trailblazer: she was one of the pioneering few to specialize in casting J-actors for Hollywood.
4. In the early days, J-actors had to be trained in English; good speakers were hard to find; lately, films in which actors speak in their native Japanese are gaining prominence, so fewer actors are required to be fluent in English; but English proficiency can be advantageous, for example in communicating with the (non-Japanese) director.
III. The Job of Casting Director: Discovering J-Actors
1. A casting director’s a job is to find good actors for the director.
2. Actors famous in Japan have often been difficult to cast (scheduling conflicts, unwillingness to audition); this afforded Yoko-san the opportunity to scout lesser known talent/unknowns.
3. On Hiroyuki Sanada: he would study English 5 hours a day while working on a film; worked tirelessly from morning to night, even helping with set design; wanted everything to be authentic in the film “Minamata”; Yoko-san urged him to get “producer” credit (which he would for “Shogun”).
4. Yoko-san also retells her discovery of Rinko Kikuchi (cast as a deaf person in “Babel”) who was virtually unknown but whose talent Yoko-san recognized; it seems that certain actors are more quickly noticed abroad than in Japan (preferences for a certain “type” can be different).
IV. “The secret is ACTION”: The “Pinch and Ouch” Technique
1. Yoko-san has always had a love of acting and drama; began in childhood; her father (a diplomat) was an important influence and introduced her to classic movies from an early age; she started watching J-films in earnest as a child in Canada.
2. She not only casts actors, but works with them to improve their craft.
3. Acting is all about *communication*; after all, the story unfolds as interactions between the characters.
4. The secret to communication is *action*; this is what dramatic “acting” is about; “actors” are called so for a reason — they act, they move; it isn’t about phony emotion.
5. This is the formula: you WANT something so much or you want someone to do some things so badly, you have to communicate it; in turn, the other person must REACT in a genuine way.
6. This is the essence of legendary acting teacher Sanford Meisner’s concept of “Pinch and Ouch”: when you give someone a little pinch, the reaction is only a little “ouch”; the goal is to get actors to connect emotionally, forging an energy that the actors channel outward in an active way — a big “OUCH!”
7. Yoko-san applies this technique in her work with actors; she tries to “pinch” them in such a way that they will “ouch” convincingly: she reads one part of a dialogue; her goal is to “reach the actor”; when she feels that she has gotten the actor to react in the desired way, that actor has “passed” the test.
8. Every good actor tries to *live* each moment; the same can be applied to English-learning; instead of robotically repeating a phrase like “This is a pen,” create a meaningful context in which it is natural to say it: e.g., A woman hasn’t seen her husband and wants to write to him. You go up to her and softly proffer, “This is a pen.” (I got goosebumps when Yoko-san demonstrated this!)
9. Yoko-san hopes we, as teachers, can impart the idea that speaking English or any language is an ACTION.
10. Another important point of “Pinch and Ouch is the ability to *listen*; the desire to learn from someone requires attentive listening. (Yoko-san then reminisces about her work with Richard Via [Broadway director and Chief Advisor to MLS] and the inception of Model Production, an acting company, and of MLS.)
V. Toward a More International Perspective
1. When Yoko-san was at ICU (International Christian University), she observed that only the foreign students would raise their hands to ask questions in class; the J-students were afraid of looking foolish by asking “stupid” questions, so only asked them after class.
2. We should not be afraid to express ourselves, our opinions; in the acting world, some worry they aren’t talented or attractive enough; but every person can be *beautiful* because every person is unique.
3. Opening up goes hand-in-hand with an openness to other ideas and other perspectives; the Japanese education system has a long, respectable, and rich history; but there is room for it to be more international, more receptive to other ideas; things don’t have to be only “this way” or “one way.”
4. This openness, this fearlessness is also a requirement of acting; just as the piano is the instrument of a concert pianist’s artistic expression, so is the “self,” the body the instrument of the pro actor’s creative imagination.
5. To become international is to overcome the fear of opening up to new ideas, new experiences; fewer young people in Japan are interested in traveling/studying abroad; it’s an alarming trend to Yoko-san; as a child in Canada, she cultivated an early taste for intercultural interaction: her father would host dinner parties in which she got to mingle with people from all over the world.
6. It is all about good *communication*, to make more *peace* in the world.
7. Japan is opening up and we need to be ready; we must remember that we are “citizens of the world, not just of Japan.”
8. The influence of teachers on children is important; we should encourage them to open up and share — there is “so much we can share.”
【Part 2】
I. Q&A Session
1. “How did you find unknowns?” Yoko-san describes the process: she looks at photos of the tryouts until one catches her eye as if in a moment of epiphany; she explains further with examples of actors (Suzuka Ohgo, Sosuke Ikematsu, Rinko Kikuchi) and movies (“Birdman, Drops of God”).
2. “What are the strengths of Ryohei Suzuki as an actor?” (Yoko-san answers with personal anecdotes.)
3. “What kind of Hollywood English do J-actors learn?” Pronunciation has to be clear (intelligible), but an accent is OK; if perfect, they become “Asian-American.” (Yoko-san comments on Ken Watanabe’s English: it wasn’t good when he did “Last Samurai;” he memorized everything, even for interviews, and added dramatic flair to appear like he was talking naturally.)
4. “How do we remove students’ hesitation to speak?” They must find out what they WANT (earlier, Yoko-san talked about *want* — acting is about finding this “want” or one’s dream; writing/keeping a journal may help); want (i.e., desire, hunger) must supersede fear of making mistakes or looking foolish; a film that came out this year illustrates this point: directed by Baltasar Kormakur, it is about an elderly Icelandic man who goes to Japan to find the woman he loved years before (Yoko-san also appears in the film!); Yoko-san emphasizes the importance of *believing* in something: “If you believe that you can do something, you can do it” (example: “Emperor” was a difficult film to produce, but Yoko-san believed in it so much it was finally completed); enjoyment is also essential for J-students to speak in front of others without hesitation: “They have to *enjoy* what they’re doing.”
II. “Surprise” Guest: Sawai-San, Anna Sawai’s Dad
1. Mr. Ota introduces by relating how Anna Sawai was discovered by Yoko-san and cast in her debut film “Ninja Assassin,” for which Anna has always been grateful to Yoko-san; Anna was the first woman of Asian descent to win a Primetime Emmy Award for Outstanding Lead Actress in a Drama Series.
2. Mr. Sawai greets us in flawless English before switching to Japanese to talk about his daughter and how: (1) she got into the movie business and (2) how she became bilingual.
(1) Anna was cast for “Ninja Assassin” at the age of 15; the director said: “When I saw Anna, I saw Kiriko [character] in front of me”; it was from this experience of filming “Ninja Assassin” that Anna decided she wanted to make her career in Hollywood.
(2) As an ES student, Anna didn’t know any English; but Mr. Sawai explains that he did not compel his daughters to learn; it was a natural outgrowth of their time spent in a foreign country: they moved to the Philippines for their father’s work and attended an international school; after a couple of months, Anna took her friends home from school, playmates with whom she spoke in English; parents were afraid she would forget the mother tongue, so made sure that the language of evening domestic life was Japanese.
3. Mr. Sawai says Anna enjoyed her time at international school; he surmises that the curriculum probably helped: it consisted of fun, creative activities and group work.
4. As for practical advice, Mr. Sawai suggests that adults create an environment in which children use the language naturally (as opposed to an object of academic study).
III. Acting Exercises You can Use in the Classroom
1. When actors learn lines such as ”I went to New York yesterday,” there are many ways of saying them; it involves stressing different words in the sentence; first you have to know what it is you want to say.
2. Have students underline the most important words they want to communicate and stress them (not every word like machine-gun speech); have them get a feel of the musical beat of English (it is different from Japanese); this is exactly the kind of exercise that actors do.
3. To practice communication for “Pinch and Ouch”: make pairs; look at partner and immediately describe them; say anything without thinking (“soft brown hair”).
4. Develop the above further in this repetition exercise: again make pairs; make a statement such as “I like your shirt”; the other person responds by turning the statement into a question, “Do you like my shirt?” Then the first person replies in turn, “Yes, I like your shirt,” and so on, back and forth; for actors, the responses have to be instinctive and real; repeat a phrase to express what you feel at that moment; “forget the meaning, focus on feeling.”
5. Mr. Ota notes that, although it doesn’t have to be quite as sophisticated with students, it can be useful for practicing grammar and simple phrases we want them to learn.
6. The last exercise is a kind of “telepathy” game — again in pairs: face each other and take turns counting to 10 (or saying other vocab); say it in a way to tell your partner that you want them to perform a simple action without saying explicitly (e.g., you want them to stand up, turn around, etc.); this is a very lively communication exercise!
7. Yoko-san’s closing words: “I hope you *enjoy* teaching English. Life is too beautiful not to enjoy what you do. If you don’t enjoy it, don’t do it.” What inspiration! She is the supreme example of someone who is living life to the fullest.
【My Comments: “Pinch and Ouch” and the Kitahara Method】
As members of Kitaken, I think we were well-prepared to appreciate and comprehend the finer points of Ms. Narahashi’s talk. Much of what she shared with us resonates with the principles of the Kitahara Method. Of course, we know the importance of *drama* as a teaching tool in Mr. Kitahara’s lessons. I remember a meeting a few years ago when we had the fun of rehearsing a dramatic dialogue with a partner and then performing it for Mr. Kitahara.
But I think the principles of drama can be extended further. Take the “Pinch and Ouch” technique. If we look carefully, we can see that the mechanism behind it imbues Kitahara-sensei’s lessons with a kind of vital energy and galvanizes his students to action. In too many English lessons do we see only little “pinches” and little “ouches.” We should create an environment in which students will be motivated to react naturally, to “ouch” even in the smallest of gestures (for example when they raise their hands to speak: when they raise them halfway, Kitahara-sensei tells them to “stretch your elbows!”) Like acting directors, we can motivate our students to connect with each other and energize each other to action through the medium of English. In a true Kitahara-style lesson, speaking English isn’t phony mimicry — it is motivated, authentic *action*, just as the art of acting is for Yoko-san.
I want to thank everyone again, especially Kitahara-sensei, for the wonderful privilege I had to participate in this magical evening.
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最後に今回の北研に参加した会員のレポートを紹介します。今回の北研には40人を超す参加があり、レポートも多岐に渡りますので、まとめたものの紹介になります。
1. 奈良橋陽子さんの哲学
奈良橋陽子さんの哲学は、個性の尊重、ドラマを通じた学び、そしてコミュニケーションの力に深く根ざしています。彼女のトークショーでは、これらのテーマがいくつもの具体的なエピソードや言葉を通じて語られました。
1.1 生徒たち一人ひとりの個性を大切にすることの重要性
奈良橋さんは「Every single person can be beautiful. It doesn’t matter how you look. There is only one ‘you’ in the whole world.(誰もが美しい存在であり、あなた以外にあなたはいない)」と語り、一人ひとりが持つ独自性を大切にすることの重要性を強調しました。
彼女は、俳優のキャスティングを通して感じた「外見に関係なく、人はその人らしさが輝く瞬間がある」という経験を共有しました。この考え方は、教育現場にも当てはまり、生徒一人ひとりの個性を引き出すことが教師の役割だと示唆しています。
1.2 「ドラマは人生の先生」という信念
奈良橋さんは「Drama is the best teacher to teach me communication.(ドラマはコミュニケーションを教えてくれる最良の先生)」と述べ、ドラマを通じた学びの深さを語りました。
彼女の人生において、ドラマや演技を通じて得た経験が、豊かな生き方や人間関係の築き方を教えてくれたとしています。特に、「役者はその瞬間を生きる(Every actor tries to live each moment)」という演技の理念が、日常生活にも応用可能な教訓であることを力説しました。
1.3 コミュニケーションの力とその奇跡について
奈良橋さんは、「Life is too amazing, it’s a miracle.(人生はあまりに素晴らしく、奇跡のようだ)」と語り、言葉の持つ力や、コミュニケーションが生み出す奇跡を強調しました。
彼女は、自身の経験から、コミュニケーションがなければ戦争すら起こり得るとし、「If we don’t have good communication, we’ll have a war.(良いコミュニケーションがなければ、戦争が起こる)」という警鐘を鳴らしました。また、言葉や表現を通して他者と心を通わせることが、いかに世界を平和で豊かなものにするかについての具体的なビジョンを語りました。
2. 教育者へのメッセージ
奈良橋陽子さんのトークショーでは、教師としての姿勢や教育へのアプローチについて深い示唆がありました。彼女の経験や言葉を通して、教育者に向けた以下のメッセージが伝えられました。
2.1 教師が楽しむことで生徒たちも楽しむ授業作り
奈良橋さんは、「Enjoy what you do, if you don’t enjoy, then don’t do it.(楽しんでやりなさい。楽しめないならやらないほうがいい)」と語り、教師自身が楽しむことの重要性を強調しました。
特に、教師が授業を楽しむ姿勢を見せることで、生徒たちにもその姿勢が伝わり、英語学習が楽しいものになるといいます。「教師が楽しんでいないと、生徒にもそのエネルギーが伝わらない」という彼女の言葉は、多くの教育者にとって指針となるものです。
2.2 生徒に積極性を促す「間違いを恐れない姿勢」の重要性
日本の教育における課題として、奈良橋さんは「日本人学生が質問をしない」点を挙げました。彼女は、「Don’t be afraid to make mistakes.(間違いを恐れないで)」という姿勢が必要だと強調しました。
ICU(国際基督教大学)での学生時代、留学生が積極的に質問する一方で、日本人学生は授業後に個別に質問をする傾向があったといいます。これは「間違った質問をしたくない」という心理からくるものだと分析し、生徒に積極性を持たせることが教師の重要な役割であると指摘しました。
2.3 英語を「学問」ではなく「行動」として教える方法
奈良橋さんは、「Speaking language is an action.(言語を話すことは行動だ)」と語り、英語を学問的に捉えるのではなく、コミュニケーションの手段として捉える重要性を強調しました。
その中で、「Pinch and Ouch」メソッドやドラマ形式の学習法を活用することで、言葉を単なる文字や音としてではなく、感情や意図を伝える「行動」として教えることができると述べました。このアプローチは、実際の場面で役立つ英語力を育むために効果的であるといえます。
3. キャスティングから学ぶ教訓
奈良橋陽子さんのキャスティング経験には、多くの学びが詰まっています。俳優たちの努力や直感を重視したキャスティングのプロセスは、教育やキャリア形成にも応用できる教訓を提供します。
3.1 真田広之さんの1日5時間の英語学習の努力
奈良橋さんは、真田広之さんの努力家としての姿勢について話しました。「真田さんは『将軍』の撮影に備えて、毎日5時間英語を勉強し続けた」とのエピソードを共有しました。
この話は、言語やスキルの習得には「努力と継続」が不可欠であることを示しています。特に、英語を「勉強」ではなく「活用」する姿勢が、彼の成功を支えた要因だと述べました。
3.2 渡辺謙さんのインタビューでのエピソード
渡辺謙さんについては、「ラストサムライ」のインタビューでのエピソードが紹介されました。彼は、英語が流暢に見えるように、インタビューの内容をすべて暗記し、演技の一環としてインタビューに臨んだといいます。
奈良橋さんは、彼の「俳優としての工夫と準備」が、どんな状況でも自分を最大限に表現する力を生み出したと評価しました。
3.3 配役における直感の重要性とその裏にある準備
奈良橋さんは、キャスティングにおいて「直感」が重要であると述べました。彼女は、「俳優が持つ独特の輝きや存在感を感じ取ることが、役にふさわしい人を見つける鍵になる」と語りました。
しかし、その直感は偶然ではなく、膨大な応募書類を読み込み、オーディションを丁寧に実施するなど、徹底した準備に基づいていることを強調しました。このプロセスは、教育現場においても「生徒一人ひとりを深く理解する」ことの重要性を示唆しています。
4. ハリウッドにおける日本の存在感
奈良橋陽子さんは、ハリウッドでの日本人俳優の役割と、日本映画界の進化について多くの示唆を提供しました。彼女の経験を通して語られるエピソードには、国際的な舞台で活躍するための教訓が凝縮されています。
4.1 映画「ラストサムライ」や「将軍」に見る日本人俳優の活躍
奈良橋さんは、映画「ラストサムライ」やドラマ「将軍」における日本人俳優の活躍を語り、特に真田広之さんと渡辺謙さんの努力と成功について詳細に触れました。
- 真田さんは、「将軍」でプロデューサーを務めるとともに、流暢な英語を習得し、演技に専念できる環境を整えました。
- 渡辺謙さんは、「ラストサムライ」の撮影時、言語の壁を越えるため、全セリフを暗記し、自分なりの表現で演じ切ったといいます。
彼らの努力と成果は、日本人俳優がハリウッドでの存在感を高めた象徴的な事例となっています。
4.2 英語を使わない演技環境の増加とその影響
奈良橋さんは、最近のハリウッドでは、英語を話せなくても日本語で演技をする機会が増えていることに言及しました。例えば、日本語セリフが許容される作品が増えたことで、英語力が必須条件ではなくなりつつあります。
これは日本の文化や言語が国際的に受け入れられている証拠である一方で、「国際的な視点やコミュニケーション力は依然として重要である」と奈良橋さんは指摘しています。
4.3 国際的な舞台で活躍するための課題と進化
奈良橋さんは、国際的に活躍するための課題として「創造性」「自信」「積極性」の重要性を挙げました。彼女は、「俳優だけでなく、すべての人が唯一無二の存在であり、それを信じることが成功の鍵だ」と強調しました。
また、映画「怪物」などの作品が世界的に注目されていることを例に挙げ、「日本映画が次のブレイクを迎える準備段階にある」と述べ、日本映画界のさらなる発展に期待を寄せました。
5. 文化的・国際的な視点
国際的な経験を持つ奈良橋陽子さんの視点は、日本の教育や文化における課題を浮き彫りにしました。彼女の経験を基に、グローバルな視点を持つことの重要性が語られました。
5.1 日本人学生が質問をしない理由とその改善方法
奈良橋さんは、ICU(国際基督教大学)での学生時代を振り返り、留学生が積極的に質問する一方で、日本人学生が質問を避ける傾向にあることに触れました。
- 日本人学生は「間違った質問をしたくない」「恥をかきたくない」という心理から、授業後に個別に質問することが多いといいます。
- 奈良橋さんは、「Don’t be afraid.(恐れないで)」という言葉で、生徒たちに積極性を持つよう呼びかけるとともに、教師自身がその姿勢を示すことの大切さを語りました。
5.2 国際的な視点を持つことの必要性
奈良橋さんは、「We are a part of this world. Not just Japan.(私たちはこの世界の一部であり、日本だけではない)」と述べ、日本人がより国際的な視点を持つ必要性を強調しました。
彼女は、異文化に触れることで得られる気づきや、他者とのコミュニケーションを通じて広がる可能性について語り、生徒たちにもっと「外の世界」を見てほしいと訴えました。
5.3 他文化との交流がもたらす喜びと学び
奈良橋さんは、自身が幼少期をカナダで過ごし、インターナショナルスクールに通った経験をもとに、異文化との交流が人生に与えた豊かな影響について話しました。
彼女は、「コミュニケーションを通じて平和な世界を築く第一歩は、他者と心を通わせること」と語り、生徒たちが他文化に触れ、その喜びや学びを体感できる環境を提供することが大切だと述べました。
6. 英語学習法
奈良橋陽子さんのトークショーでは、英語を学ぶ際に重要な要素として「感情」「身体性」「実践的なコミュニケーション」が強調されました。彼女が紹介した学習法は、教育現場で即実践できる内容でした。
6.1 「Pinch and Ouch」メソッドを使った感情表現の練習
奈良橋さんが学んだマイズナー・テクニックに基づく「Pinch and Ouch」メソッドは、英語を単なる言葉としてではなく、感情を伝える手段として使う練習法です。
- このメソッドでは、言葉に感情や状況を乗せることの重要性が強調されます。
- 例えば、“This is a pen.” という簡単なフレーズでも、誰に、どんな状況で伝えるのかによって意味が大きく変わることを学びます。
- 英語教育において、言葉が「生きる」瞬間を生徒に体感させる指導法として有効です。
6.2 生徒たちにストレスや抑揚を意識させる音読練習
奈良橋さんは、「音読練習にはストレス(強調)とイントネーションを意識することが大切」と語りました。
- 生徒たちに、文章の中で「どの単語を強調するか」を考えさせ、アンダーラインを引かせる練習法を紹介しました。
- 例文として、“I went to New York yesterday.” を使用し、「誰が」「どこに」「いつ」の部分を強調するかで意味が変わることを理解させます。
- この練習は、生徒の発音や話し方に自信を持たせる効果があります。
6.3 ジェスチャーを活用した「生きた英語」の指導法
奈良橋さんは、言葉に頼らず、ジェスチャーや視線だけでメッセージを伝える練習法を提案しました。
- 具体的な例として、ペア活動で「言葉を使わずに相手に何かをしてもらう」練習を挙げました。例えば、目だけで「立ってください」と伝える方法などです。
- 生徒は言葉だけでなく、全身を使ったコミュニケーションの重要性を学びます。
- この活動を通じて、生徒が自然な英語表現を身につける効果が期待できます。
7. 影響力のあるエピソード
奈良橋陽子さんが経験した数々の挑戦や成功のエピソードは、聴衆に大きな感銘を与えました。特に、映画制作や俳優との関わりの中での具体的な話が印象的でした。
7.1 奈良橋陽子さんが「終戦のエンペラー」で経験した挑戦
奈良橋さんは、映画「終戦のエンペラー」を制作する過程で、ハリウッドという大きな世界での挑戦について語りました。
- 奈良橋さんは、映画の撮影を皇居で実現するという困難な目標を達成しました。
- その過程で、彼女自身も「自分にそれができるのか」という不安を抱えましたが、「信じる力」と「行動する勇気」によって乗り越えたと語っています。
- この話は、「自分を信じることの大切さ」を伝える力強いメッセージとなりました。
7.2 渡辺謙さんと真田広之さん、それぞれの努力の軌跡
渡辺謙さんと真田広之さんは、ハリウッドで活躍する日本人俳優の象徴として語られました。
- 渡辺謙さんは、「ラストサムライ」のインタビューで英語を流暢に見せるため、全ての内容を暗記し、俳優としての工夫を凝らしました。
- 真田広之さんは、「将軍」の撮影のために1日5時間英語を勉強するという驚異的な努力を続け、言語の壁を乗り越えました。
- 彼らのエピソードは、「努力が道を開く」という普遍的な教訓を与えてくれます。
7.3 映画制作の裏側での困難とその解決策
映画制作の過程で、言語や文化の壁を超えるための工夫が多く語られました。
- 例えば、「ミナマタ」の撮影では、日本語の看板が逆向きに設置されるなど細かなミスがあり、朝から晩まで修正に追われたといいます。
- 奈良橋さんと俳優たちは、文化の正確性を保つため、細部にまで注意を払い続けました。
- こうした努力が、映画における真実味を高め、観客に深い感動を与える結果につながりました。
8. アンナ・サワイさんの成長ストーリー
アンナ・サワイさんの成長過程は、国際的な環境での学びやバイリンガルとしての成功を象徴しています。奈良橋陽子さんが語った彼女のストーリーには、教育や言語習得に関する多くのヒントが含まれています。
8.1 幼少期のインターナショナルスクールでの学びと環境
アンナさんは、幼少期をフィリピンのインターナショナルスクールで過ごしました。
- 学校では、グループ活動や創造的なアプローチが重視されており、「学校が楽しい!」と彼女が感じるほどの学びの場だったといいます。
- 日本人学校とは異なり、自由な発想を育む環境が、彼女の国際的な感覚を培いました。
8.2 フィリピンでの生活が彼女に与えた影響
アンナさんの家庭環境も、彼女の言語習得に大きな役割を果たしました。
- 家庭では、両親とは日本語で話し、姉妹とは英語を使用するというバイリンガル環境が整えられていました。
- その結果、彼女は自然に英語を習得し、国際的な舞台で活躍する素地を作り上げました。
- 「異なる国籍の子どもたちと接する中で、彼女はスピークアウト(自分の意見を積極的に発言する)を身につけた」と述べられました。
8.3 「英語は学ぶものではなく吸収するもの」という視点
奈良橋さんは、「英語は学問としてではなく、コミュニケーションを通じて自然に吸収するもの」という視点を強調しました。
- アンナさんは、幼少期に英語を「勉強」ではなく「環境」の一部として取り入れた結果、抵抗なく言語を使いこなせるようになったといいます。
- このエピソードは、早期から自然な形で英語に触れる環境の重要性を示しています。
9. 教室で使えるアクティビティ
奈良橋陽子さんが紹介した教室で実践できるアクティビティは、言葉だけでなく感情や身体表現を通じて英語を学ぶユニークで効果的な方法が含まれていました。これらは、生徒が英語をより自然に、そして自信を持って使えるようになることを目的としています。
9.1 ペアでの感情表現やアイコンタクトを使った活動
奈良橋さんは、言葉に頼らず、目やジェスチャーで意図を伝える活動を紹介しました。
- 具体的には、ペアになり、一方がジェスチャーやアイコンタクトを使って、相手に指示を出す練習をします。例えば、目だけで “Please stand up”(立ち上がってください)を伝えるといった方法です。
- 奈良橋さんは、「Look at each other and send a message without words.(お互いを見て、言葉を使わずにメッセージを送ってみて)」という言葉を使い、生徒が非言語コミュニケーションを体感することの重要性を強調しました。
この練習は、生徒たちが英語を使う自信を深めるとともに、相手の感情や意図を理解するスキルを高めることができます。
9.2 単純な数字やフレーズを感情を込めて繰り返す練習法
奈良橋さんは、単純な数字やフレーズを使い、感情を込めた練習を提案しました。
- 例えば、「1から10までの数字を交互に言う」練習では、相手に何かを伝えたいという意図を持って数字を言います。単に “One, two, three…” と言うのではなく、怒り、喜び、驚きなど、感情を乗せて伝えます。
- 奈良橋さんは、「Underline the most important word and stress!(最も重要な単語に下線を引いて、それを強調しなさい)」という指示を出し、フレーズに抑揚や感情を加えることの練習を強調しました。
この活動は、生徒が英語の抑揚やリズムを自然に身につけるのに役立ちます。
9.3 生徒が英語で自信を持って伝える能力を育む方法
英語を自信を持って使えるようにするために、生徒たちに「自分の意図を考える」練習をさせることを提案しました。
- 奈良橋さんは、“I like your skirt.” というフレーズを例に挙げ、「どの単語を強調するかで意味が変わる」ということを説明しました。例えば:
- “I like your skirt.”(私はそのスカートが好きです)→ 好きという感情を強調。
- “I like your skirt.”(私はあなたのスカートが好きです)→ 他の誰でもなく、あなたのスカートを強調。
- この練習を通じて、言葉に感情や意図を込めることで、より効果的に自分の考えを伝える能力を身につけます。
9.4 総評と効果
これらのアクティビティを通じて、奈良橋さんは「Speaking language is an action.(言語を話すことは行動だ)」というメッセージを強調しました。英語は単なる音や文字ではなく、感情や意図を伝えるためのツールであるという視点を生徒に教えることが重要だと述べています。
このようなアクティビティは、英語をより「生きた言葉」として使えるようになるだけでなく、生徒が英語を使うことへの抵抗感を減らし、自信を深めることにつながります。また、非言語的な要素を取り入れることで、生徒同士の協力や創造性を高める効果も期待できます。
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参加者のみなさんの心に残った奈良橋陽子さんの言葉を英語のままで残します。
“My love for drama, acting has never, never changed.”
“Every single person can be beautiful. It doesn’t matter how you look. There is only one ‘you’ in the whole world.”
“Life is too amazing, it’s a miracle.”
“Have fun! If you enjoy it, kids will enjoy it.”
“Speaking language is an action.”
“What you want is all that matters. It’s still never too late.”
“Drama is the best teacher to teach me communication.”
“If we don’t have good communication, we’ll have a war.”
“Enjoy what you do. If you don’t enjoy, then don’t do it.”
“Don’t be afraid to make mistakes.”
“There is so much to share, so much to give and take.”
“Underline the most important word and stress!”
“Every actor tries to live each moment.”
“You have to believe in yourself. That’s the most important thing.”
“Teaching is one of the most important jobs.”
“Look at each other and send a message without words.”
“English is not studied; it is absorbed.”
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今回の勉強会に参加した多くの方々から、イベントを通じて得た感動や学びに対する感謝の声が寄せられました。まず、勉強会を開催してくださった北原先生への感謝として、「このような貴重な会を開催してくださったことに心から感謝します。毎回、新しい学びを与えてくださる場を提供していただき、本当にありがたいです」「奈良橋陽子さんのような素晴らしいゲストをお招きいただき、普段触れることのできない視点を知ることができました」といった声がありました。また、北原先生の熱意と準備の細やかさに対し、「北原先生の思いが伝わる素晴らしい会でした」との評価も寄せられています。
さらに、スタッフへの感謝も多くの方々から述べられました。「スムーズな受付対応や、会場の雰囲気作りに感動しました。細部まで配慮してくださったスタッフの皆さんに感謝します」「受付での丁寧な対応や、全体の進行のスムーズさに驚きました。この素晴らしい運営があってこその成功だと思います」といった声や、「準備から撤収まで、多大な努力をされたことが伝わりました。本当にありがとうございました」との感謝の言葉が印象的でした。
そして、特別ゲストとして登壇いただいた奈良橋陽子さんへの感謝も、多くの参加者から寄せられました。「映画業界やハリウッドでの経験を惜しみなく共有してくださり感動しました。特に『終戦のエンペラー』の裏話は心に響きました」「お話を聞きながら、奈良橋さんの強い信念と情熱に感銘を受けました。私も自分の信じる道を進もうと思います」「実際にハリウッドで活躍されている方から直接お話を伺えたことが夢のようです。参加できたことに心から感謝します」といった声が挙がりました。また、「ユーモアを交えながらも深いメッセージを伝えてくださり、心に残るひとときでした。特に“Life is too amazing, it’s a miracle”という言葉が忘れられません」という感想も印象的でした。
最後に、イベント全体に対する感想として、「参加者全員が楽しみながら学べる温かい雰囲気のイベントでした。次回もぜひ参加したいです」「これほど多くの学びを得られる場を用意していただき、関係者の皆様に感謝しています。帰宅後も余韻が残るほどの素晴らしい会でした」「普段触れることのできない映画制作や国際的な視点を学ぶことができ、視野が広がりました。参加できたことを本当にうれしく思います」との声が寄せられました。
これらの感謝の言葉から、今回の勉強会がいかに多くの人々にとって価値のあるものであったかが伝わります。北原先生、スタッフ、そして奈良橋陽子さんをはじめとする関係者の皆様に対する感謝の気持ちは、この場を支えた全ての方々への深い敬意として表されていました。