4月12日(土)第227回例会

 北原先生、例会では貴重な学びの時間をありがとうございました。会場を準備してくださったK先生、快適できれいな会場をありがとうございました。昭和女子大学附属中学校の設備は素晴らしく、壁四面にプロジェクターが映る環境で学べたことに感謝いたします。今後の例会も楽しみです。

0)2025(令和7)年度北研の予定

場所:昭和女子大学附属中学校3階CL教室
日時:毎月土曜日午後(2:30~5:00)

年間予定:

  • 4月12日「中学生から始める英語フォニックス指導」第1回目
  • 5月17日「スイス公文学園の日々(仮称)」高山明美先生
  • 6月21日「中学生から始める英語フォニックス指導」第2回目
  • 7月12日「中学生から始める英語フォニックス指導」第3回目
  • 北研静岡合宿 8月23日午後、24日午前 沼津市立沼津高等学校
  • 9月20日、10月18日、11月22日、12月6日、1月24日、2月21日、3月28日:北研教師版英語劇FRIENDS10周年記念祭
    (3月14日も開催の可能性あり)

1)参加者全員の自己紹介と最近の授業の様子

 参加者の自己紹介では、全国で北原メソッドを学ぶ同志がたく先生いることを実感する時間となりました。K先生のお嬢さんへのフォニックス指導の体験談が特に印象的でした。中学校入学前の春休みに短期間でフォニックス指導を猛特訓したところ、中学1年の教科書を1冊全部読めるようになったそうです。最初は小学校で英語を学んでいてもほとんど読むことができなかったものの、入学する私立中学校の学習計画や教科書を見て「子どもたちが英語嫌いになるのではないか」と心配されたことがきっかけだったとのことです。

 また、オーストラリアのパース日本人学校から帰国されたF先生からは、小学生に国語と社会を「北原メソッド」で教えたところ、うまくいったという報告もありました。参加者それぞれの体験談を通して、北原メソッドの多様な活用法と効果を実感できる時間となりました。

2)じゃれマガカルチャー(実演)

 今回のトピックは”100 yen shops are amazing!”でした。実演では、北原先生によるじゃれマガカルチャーの指導法が紹介されました。登場する重要単語や表現について次のような確認が行われました。

  • “amazing”や”incredible”など類義語を問う
  • “such”の品詞や用法の確認
  • “goods”の意味確認
  • “they”の指示対象の確認
  • “would”の用法理由
  • “cylinders”や”cones”など、数学用語が日常英語でも使用される例の紹介

 さらに、即興会話練習として以下の質問について生徒はペアで競って答える活動が行われました。

  • Do you often go to a 100 yen shop?
  • What do you buy there?
  • What was a thing that surprised you?

 最後に、ペアで「100円ショップ」を自分の経験を交えて外国人に説明する活動も行われました。北原先生からは、「pyramidのようになかなか見ないが、カタカナにすると知っている日常の言葉と結びつけてあげる」、「復習に戻してあげる、何回ももどる。そうすると前の教科書は役立つから持ってくる」というアドバイスもありました。

3)北原発信語彙Kahoot!実演②by KPT委員会

 KPT委員長のC先生による、Kahoot!の使用方法の説明と実演が行われました。資料には「教員向けKahoot!使用手順」と「生徒向けKahoot!使用手順」に分けられて実施中の教員の操作、教員向けTipsが詳細に書かれており、分かりやすい内容でした。

 実演では、Kahoot!の操作手順について次のような説明がありました:

  1. 教員側:アクセス→サインアップ→「北原発信語彙」でクイズ検索(「お気に入り」に登録しておくと便利)
  2. 生徒側:アクセス→PINコード入力→アバター&ニックネーム入力→4択問題に回答

 北原先生からは、この活動は「中学校発信語彙リスト三種問題集」を基に作成されており、レベル1(英検5級:中1)~レベル4(英検準2級:中3)まであること、問題集で3回パワーテストを行い、4回目にKahoot!でスピードを競うのが効果的であるとの補足がありました。

 「生徒側のタブレットでも問題文が見える設定方法」や「不適切なニックネームを入力した生徒の削除方法」なども紹介され、実践的な内容でした。また、C先生は翌日20時からZoomでKahoot!セミナーを開催するとのことでした。

4)「中学生から始める英語フォニックス指導」①

序章 音声から離れない授業とは

 北原先生の著書「中学生から始める英語フォニックス指導」の序章「音声から離れない授業とは」についての講義が行われました。本の表見返しには「中学生から始める英語フォニックス指導手順図」があり、これを見ると全体の構想がわかるとの説明がありました。また、広島の胡子美由紀先生が前書きにコメントを寄せていることにも触れられました。

⚪︎中・高の英語授業を振り返る〜上智大学で教職課程の授業を担当されていた時の学生のレポートから

 北原先生は上智大学で教職課程の授業を担当していた際、6年間にわたり学生たちに中高時代の英語授業についてレポートを書かせていました。その結果、全員が「楽しいと思ったことはなかった」と答え、授業中は「早く時間が過ぎて終わることだけを願っていた」という回答ばかりだったそうです。

 英語の分野でトップクラスの一角を占めると言われる上智大学英文学科の学生がそのように答えることに、北原先生は心底恐ろしさを感じたと話されました1。学生たちは中学・高校で以下の「3悪」によって痛めつけられてきたといいます。

  1. 「単語テスト」:語彙指導をろくにせず、語彙習得を生徒に丸投げする日本語と英語の意味が1対1対応のもの
  2. 「なんでも和訳」:内容理解の授業で常に日本語訳が求められる
  3. 「悪のノート」:予習と称して左ページに本文を写し、単語と品詞の意味を調べ、右ページに和訳を書かせる

⚪︎英語教育におおける「中1問題」:音から文字への壁

 小学校で楽しく学んだ英語が、中学校の膨大な語彙数に直面して「読めない、書けない」という状況になり、英語嫌いになるという「中1問題」についても議論されました。このことについて参加者からは、「入学したての中1の生徒の自己紹介カードに『苦手な教科:英語』と書かれており、早速苦手意識があることに衝撃を受けた」という意見も出ました。

 音と文字の不一致が大きな壁となっており、例えば”I want to go to Italy. I want to eat pizza.”をカタカナでふりがなをふっている例や、”Beautiful”はわかるけど読めないといった状況が報告されました。このような「中1問題」を解決するには、音と文字の一致を図るフォニックス指導が効果的であるとの意見が共有されました。

⚪︎音声から離れない授業

 北原先生は「音声から離れない授業」の重要性を強調し、「ば・せ・ば・11(じゅういち)」(baseball)という例を挙げて、音声から離れなければ児童・生徒は英語を話せるだけでなく、4技能全てを開花させることができると説明されました。

 また、「日本の英語教育は目で勉強するからダメなんだ」という指摘もあり、発音指導に自信がない教師が多いことも問題として挙げられました。「発音に関しては色んな英語がある、フィリピンイングリッシュがある、など色々あるけど、ジャパニーズイングリッシュがあってもいいんだ」という免罪符にして発音を指導しない教師もいるという現状も指摘されました。

⚪︎「音声から離れない授業」を受けた生徒のメッセージ

 北原先生の「音声から離れない授業」を受けた生徒たちのメッセージが紹介されました。特に印象的だったのは以下の例です。

  1. 1年次不登校で、まともに勉強し始めたのは3年生になってからという生徒からのメッセージ:「発声すれば伸びていく。英語の歌を歌う、英語の教科書を音読する。今英語ができなくても諦めない。できるようになります。頑張れ!」。この生徒は授業でピクチャーQ&Aの活動の際に挙手するものの、なかなか正解できなかったそうです。しかし北原先生は「挙手してトライすることが大事、君が間違えたことでみんなの為になっているんだよ」と励まし続け、次第に正解できるようになったとのことでした。
  2. 慶應大学4年生の教え子からのメッセージ:「勉強している感覚はないのに中学3年間を終える頃には日本語を読むような感覚で英語を読めるようになっていました。受験のために英語を勉強した記憶もありません。高校に入って英語を話さない授業があることにとても驚きました」。

 これらの例を通して、間違いを恐れず声に出して発言することの大切さ、そして声を出すことで自然と英語が身につくという北原メソッドの効果が示されました。

⚪︎「音声から離れない」具体的な指導のポイント

 「音声から離れない」具体的な指導のポイントとして、以下の3点が挙げられました:

  1. 正しい発音によるインプットは頭の中に英語の回路を作る:言語習得には音の識別、発声、音律(プロソディー)、イントネーション(抑揚)、アクセントといった要素が必要です。教師がこれらを正確に指導することで、生徒の音の認識力が上がります。
  2. 音読はスピーキングへの橋渡し:日本ほど音読指導が行われている国はないそうですが、音読はインプットされた表現、文法、語彙などをアウトプットへ向かわせるスピーキングへの橋渡しとなります。「骨振動で音は耳をふさいでも聞こえる、しかし鼓膜を通して入れないと『音』は残らんのだよ」という北原先生の言葉も紹介されました。
  3. 授業を発信型に変える:教科書を正しい発音と英語らしいイントネーションで読めるようになったら、チャンツ、歌、寸劇、絵本の読み聞かせなど楽しいアウトプット活動に取り組ませます。

 次回(6月例会)の内容・・・第1章、第2章(できるところまで)を予定。

 次回の6月例会では、「中学生から始める英語フォニックス指導」の第1章、第2章(できるところまで)を取り上げる予定です。

おわりに

 今回の北研例会は、新生北研として昭和女子大学附属中学校の素晴らしい設備のCL教室でスタートし、大変充実した内容でした。参加者の皆先生との交流を通じて、全国で北原メソッドを学ぶ同志がたく先生いることを実感できました。

 「音声から離れない授業」の重要性を改めて認識し、北原メソッドの根底にあるものを確認することができました。春からの新学期に向けて、「音声から離れない」ことを忘れずに指導していきたいという気持ちを強くした例会でした。

 北原先生、K先生、そして参加された皆様に感謝いたします。来月の例会も楽しみにしています。