2日目は、北原先生による「中学生から始める英語フォニックス指導」の講演と演習がありました。講演に先立って、コロナ以降に作成したICT教材の紹介がありました。
「わくわくペアワーク」
北原先生が1990年代にイギリスのエクセター大学でペアワークについて研究された経験をもとにした教材です。帰国後には、ALTと一緒に取り組む「スーパーペアワーク」を正進社から出版しており、「わくわくペアワーク」はそのリニューアル版にあたります。従来の紙の教材とは異なり、デジタル版ではプリントを印刷する必要がありません。教師が教材を生徒に配信するだけで取り組むことができるため、授業準備の負担を減らしながら、ペアでの活動を手軽に取り入れられる点も特徴です。
「じゃれマガculture」
「じゃれマガ」は、2006年からジャレル先生が作成されてきた時事問題を扱う教材です。北原先生は、日本人に最も不足している英語技能はspeakingではなくreadingではないかと考えていた中で、この教材に出会い、2008年から授業に取り入れました。教科書の本文を読むだけでは十分ではなく、より多くの英文を読み、内容を読み取る経験が必要です。一方で、生徒の精神年齢を考えると、絵本では少し物足りない場合もあります。そこで、生徒の興味や関心に合わせてさまざまなトピックを扱える「時事問題」に着目しました。「じゃれマガculture」は、その中から日本文化や英米文化に関する話題を取り上げた教材です。生徒が楽しみながら、教科書以外の英文に触れる機会を増やすことができます。デジタル版のサブスクリプションも利用できます。
「わくわくナルホド英文法」
北原メソッドでは、文法を導入するときに、いきなり新しい内容を教えるのではなく、まず復習から始めることを大切にしています。一般的には新しい文法事項の説明から入ることが多い中、北原先生は「復習をするからこそ、学校に来る意味がある」と話されています。大学生であっても、中高6年間のどこかで一度は英語につまずき、塾や家庭教師などを利用して克服してきた経験があります。実際に関係代名詞のページに取り組みました。新しく学ぶ文法にはピンク色の印が付いており、どこが新出事項なのかが分かりやすくなっています。ICTがなかった頃は、英文をすべてノートに書き写す必要がありましたが、この教材では穴埋めを中心に取り組めるため、効率よく復習や確認ができます。
「Word Flash2」
単語をフラッシュカードのように表示できるソフトです。2005~2006年頃に作られたものをリニューアルしたもので、浜島書店のホームページからダウンロードできます。デジタル教科書では、単語の表示順を自由に変えたり、必要な単語に色を付けたりすることが難しいため、使いにくさを感じることがあります。「Word Flash 2」では、Excelに単語を入力してリストを作成できます。例えば、発信語彙は赤色にしたり、例外的な読み方をする単語を赤色で示したりするなど、教師の意図に合わせて工夫できます。作成したリストを読み込んでスタートボタンを押すだけで、単語をフラッシュカードのように提示できます。「英語→日本語」だけでなく、「日本語→英語」に切り替えることもできるため、生徒の実態や授業の目的に合わせて活用できます。実際にWord Flash2を使った新出単語の導入も体験しました。単語を一つ一つ教えるだけでなく、発音や綴り、品詞、派生語、反対語などを次々と問い、生徒同士でも考えさせながら語彙を広げ、深めていきます。発信語彙、受容語彙、題材語を分けて考え、題材語については「その課が終わったら忘れていい」と伝えるなど、生徒が何をどこまで覚える必要があるのかを明確にすることも大切にされています。
「中学生から始める英語フォニックス指導」
講演と演習では、大修館書店から出版された同名の著書をもとに、フォニックスの指導について学びました。
これまでのフォニックスはルールが多く、「すべて覚えるのは難しい」という課題がありました。学問として考えると、できるだけ多くのルールを網羅する必要がありますが、それをそのまま若年層の児童生徒に教えることが本当に適しているかどうかには課題があります。そこで、若年層の学習者にとって必要な内容に絞って、フォニックスを系統的に指導できるようにしたそうです。
北原先生は、英語教師であっても音声学やフォニックスを体系的に学ぶ機会は意外と少ないことに触れ、まずは教師自身が基本的な知識を身に付けることが大切だと話されました。生徒の理解に合わせて、どのような順番で教えるか選択することも重要で、具体例として、CやGの発音を取り上げ、「Cはク」「Gはグ」(hard C/hard G)ではなく、北原メソッドでは「Cはス」「Gはジ」(soft C/soft G)から導入する方が分かりやすいことを紹介されました。また、文字と音の関係を定着させるため、毎時間リズムボックスを使って繰り返し音声に触れさせるなど、楽しみながら自然に身に付けられる工夫もされています。「優先的に教えるフォニックス・ルール」では、中学校の教科書で出現頻度の高いものから教えていきます。例えば、中学1年生1学期では、ee、ay、ou、ea、oo(短)、oo(長)、ow、ir、-a-e、-i-eなどを重点的に取り上げます。実際に、そのスペルをもつ単語を個人で考えた後、ペアで言い合う活動を行いました。その際、友達が挙げた単語のうち、「あ~、それあった」と思った単語は書き加え、知らない単語は書かなくてよいと指示されました。また、フォニックスのルールに当てはまらない基本語は「sight words」と呼び、「そのうち覚えればいい」と伝えるというお話もありました。
さらに、「Iceberg Effect」についても学びました。氷山の見えている部分を発信語彙、水面下の部分を受容語彙、その中でも一番水面に近い単語を意識語彙と捉えます。氷山、つまり自分の語彙力を大きくするには、「なんか聞いたことがある」という水面下の部分を大きくし、それを発信語彙へと引き上げていくことが大切だという説明がありました。
また、北原先生の英語教室「えいごでたのしくあそぼう!」の映像を視聴しました。お孫さんたちが、リズムボックスに合わせて「bbbbビー」と発音したり、ジェスチャーをつけてアクションカードに取り組んだりする様子が紹介されました。小さな子どもたちでも、楽しみながら繰り返すことで、文字と音の関係や英語表現を身に付けていく様子を見ることができました。
ブレンディング練習も体験しました。先生が提示した3つのカードを組み合わせて単語を作る活動では、例えば「AGB」を並べ替えて「BAG」にします。また、先生が発音した単語に含まれている音の文字を3枚取る活動では、「バーット」と聞いて「BAT」を作ります。指導する子どもの発達段階に合わせ、身近な語を使いながら楽しく文字と音を結びつける方法を学びました。
参加者の声
〇フォニックスについては、「何度聞いても勉強になります。また、北原先生のご指導は、体験型なのでとても理解が深まります」という声がありました。実際に生徒役になって活動を体験することで、子どもたちがどのように感じ、考えるのかを知ることができ、新たな気づきが生まれたという感想もありました。
〇「頭がフル回転でした。授業を受けている気分でした。何度かこの講義を聴いていますが、今回も新しい発見がありました」という声もありました。また、「自信を持って教えるためには教師自身がしっかり準備しなければならない」「『復習はいのち』とは、生徒だけでなく私たち教員も一緒ですね」と、教師自身が学び続けることの大切さを改めて感じた参加者もいました。
〇優先的に教えるフォニックス・ルールについて、隣の先生と単語をシェアする活動では、自分では思いつかなかった単語に「あ〜、それありましたね」と会話が弾んだという感想がありました。実際に自分が活動を体験することで、子どもたちがどのように感じ、考えるのかを知ることができ、新たな気づきが生まれたとのことでした。
〇「えいごでたのしくあそぼう!」の映像も印象に残ったという声が多くありました。「孫ちゃんたちが、楽しそうに学ぶ姿にほっこりし発音の良さにも驚きました」「こんな小さい子でもきちんと指導すればこれだけできるんだと実感しました」といった感想があり、楽しく繰り返し練習することの大切さを感じたという声がありました。
〇「自分で読めた!」という自信や達成感につながるフォニックスの知識は、英語初期の学習者にとって大変大切であると改めて実感したという声もありました。また、「このような研修に参加すると、生徒役になって授業を体験できること、実際の授業でどのような声がけをすべきかを要所要所で教えていただけることが大きな収穫」との感想もありました。
〇北原先生が生徒たちと現場の先生たちのために作成された教材について、「どれだけ生徒たちの力をつけ、楽しい授業に役立っているか、言い尽くすことはできません」「これからも北原メソッドを使って楽しくためになる授業を行っていきたい」との声もありました。
〇フォニックスを含め、音声や視覚的な支援を取り入れ、五感を使い、楽しく、分かりやすく学ぶ中で、子どもたちが「自ら学びたい」と思えるようにすることは、英語教育だけでなく、国語教育や特別支援教育にも生かすことができ、ユニバーサルデザインの考え方にもつながると感じたという参加者もいました。