北研合宿 in Yamagata
2026/8/8 – 8/9
1日目:北研メンバー4名の先生による実践発表
2日目:北原先生によるICT教材の紹介
「中学生から始める英語フォニックス指導」の講演・演習
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実践発表① 山形県南陽市立中学校 Y先生
「生徒の変容から考察する 自分も相手も幸せにするGlobal Citizenの育成
~北原先生から学んだ英語教育を基盤とした、一人一人を大切にする授業実践~」
内容
「生徒も教員も幸せにする北原メソッド」を基盤に「自分も相手も幸せになるGlobal Citizen」を育てる、という英語科教師としての目標を明確に持ち、実践を積み重ねてこられています。EIGO科教師からI(アイ、愛)をとったらただのEGOという兵庫県の稲岡先生のお言葉、更にご自身の中学時代の辛い体験から「違いを認め合える仲間づくり」を大切にし、愛あふれる授業、誰も取り残さない授業を実践されています。
外国語を学ぶ意義は、「自己の理解と多様性を受け入れること」から、Y先生は、Global Citizenを「自分も相手も幸せにできる人」と捉え、その育成を英語教育のゴールと定められたそうです。北原先生から学んだ4つの柱、Try to be different.、Learn from your friends.、Share your knowledge.、Contribute to the class. を授業の約束として伝えているそうです。
現在担当している中学1年生の実践より、フォニックス指導、フォニックスかるた、辞書引き競争、ジェスチャー音読、必然性のあるアウトプット活動、☆(星)読みなどが紹介されました。
フォニックス指導では、手作りのアルファベットカードで「bbbbビー」の指導。GW明けにはフォニックステストをするために、音読みシートを作成し、☆読みの宿題を課し、生徒が主体的に取り組めるワークシートの工夫が紹介されました。また、家庭学習でも取り組めるように、フォニックスルールに気づいたり、練習したりできる動画を作成し、生徒に共有しています。フォニックスかるたでは、大文字→小文字→単語(絵)→単語(文字)と、文字と音を結びつける活動が行われています。
辞書指導では、最初は3文字程度の単語を黒板に書く→引けたら立つ→辞書を読む→全員立ったら発音と意味確認。生徒が先生役をやりたがることもあり、生徒アンケートでは96%以上の生徒が辞書を使うことで勉強に役立ったと回答しました。また、タイムを測って前より早くなったら自分で自分を褒めさせ、早く引けた生徒には「Help your friend.」と言って、まだ開いていない生徒を助けさせています。
必然性のあるアウトプット活動では、偶然スーパーで出会ったYouTuberでプロランナーのジェイクさんに、自己紹介の授業にゲストティーチャーとして来ていただくようお願いし、「ジェイクさんも自分も幸せな気持ちになる自己紹介活動しよう」と提案しました。生徒たちは主体的に考え、発音・表情・ジェスチャーなどを工夫して自己紹介を行いました。
☆読みに関しては、どのページも☆5個(25回)を目標にし、定期テストにも出題。しかし1割程度の生徒しか25回読んでいないので、内発的動機付けを行っていきたいとのことでした。
生徒の変容として、「英語授業が好き」98.3%、「英語学習が好き」96.6%という結果が示されました。小さな成功体験の積み重ね、内発的動機付け、生徒が自身の成長を実感できる授業づくり、が有効であったと考察されました。最大の成果は、生徒が、英語は「覚える教科」ではなく「相手を幸せにする、楽しくさせる手段」であると実感できたことでした。
北原先生より講評
Y先生の授業を見に行ったことがあるがその時、なぜかその時、日本語の方が多かったため、ダメ出しをした。でも今日の発表は改善されていた。それは生徒たちの感想をみてわかる。良かった。相手を幸せにするということを掲げているのもいい。
フォニックス、辞書、ジェスチャー音読、が統合され、必然性のあるアウトプット活動、相手意識のある表現活動活動につながっているところが素晴らしい。
ジェイクさんを呼ぶという行動力が素晴らしい!
☆読みに関して、北原先生の助言では、何のためにやっているのかを説明し、先生のジェスチャーだけで再現できればOK。そこまでできるようになる平均が25回だが、もっと必要な人はもっと増やすなど、きちんと目安を示すとよいとありました。
生徒が25回読んでこないのは有用感がないからではないか。テストにそのまま本文を出すことにより近いメリットをあげる。英語の世界を作る。と伝えるのも大事。
Y先生のことを「神だ」とか、英語の授業は「時間が溶ける」などのコメントは北原先生ももらったことがないとのことでした。
参加者の声
「自分も相手も幸せにする」英語教育という明確な目的が、とても印象に残りました。
Y先生は、「じぶんも周りの人も幸せにできる人」をゴールにし、どの活動でもそのことを目標にして取り組んでいる。本当に一貫してそのことをつきつめてやっていることがわかりました。
フォニックスかるた、単語づくり、辞書引き競争、ジェスチャーを取り入れた音読など、入門期から英語に親しみながら「できた」と実感できる活動を行っていました。また、普段の授業でも、生徒が英語学習を通して自身の成長や他者とのかかわりにつながるような工夫や声掛けをされているとのこと。「目の前の人を大切にできる人が、相手も自分を幸せにできる」とおっしゃっていたのが心に残りました。
YouTuberであり、プロランナーでもあるジェイクさんを偶然スーパーで見かけ、「自己紹介の授業にゲストティーチャーとして来ていただけないか」と直接お願いされたというY先生の行動力には驚かされました。生徒たちに実践の場を教師自らが企画し、設定するというY先生の熱意が、生徒たちにも伝わっているのだと思います。
アンテナをはってこその「出会い」と、「その縁を逃がさず活用してよびこむバイタリティ!」が素晴らしいという声もありました。
生徒の声(アンケート)などのデータが豊富で説得力があると感じました。「英語の授業が好き」、「英語学習が好き」という生徒は、それぞれ98.3%、96.6%に及び、様々な授業実践に対するアンケートにおいても「やる気が上がった」という前向きな回答がほとんどでした。
授業を楽しい、先生が好きだと感じている理由として、成長を感じられる授業であること、生徒が自分を大切にされていると感じていることであると、アンケートの記述から読み取れました。
先生自身が「学び続ける姿」を生徒に率先垂範で見せ、大変な状況にあるときでも、手段を見つけて「自己肯定感」をあげて、気持ちを切り替えて前向きに授業に挑まれている日々の姿が伝わってきます。先生の「自己肯定感」「enthusiasm」はそのまま生徒に伝播します。
生徒ひとりひとりを大切にし、「相手を笑顔にして、相手が幸せな気持ちになってくれるような英語表現ができるようにする」というY先生の実践から、多くのことを学ばせていただきました。
実践発表② 埼玉県日高市立小学校 S松先生
「北原メソッドで中学校につなげる小学校外国語教育 ―小学校でまいた種をいかに開花させるか―」
内容
S松先生は、「紙飛行機や消しゴムが飛び交う」高校で教員生活をスタートしました。そこで学んだことは「生徒に背中を見せるな」ということでした。その後、東京大学教育学部附属中等教育学校で学びの共同体に触れ、さらに青年海外協力隊としてマーシャル諸島へ。現地では日本語を教えながら、ウクレレやキーボードで歌の楽しさも伝えました。帰国後は12年間中学校で英語を指導し、北原メソッドを実践。今年度からは小学校へ舞台を移し、これまでの経験を生かして、小中の英語教育をつなぐ実践に挑戦しています。
今回紹介してくださったのは、飛び込みの中学3年生のPicture DescribingとGesture Readingの授業と、小学校での実践でした。
中学校では、Picture DescribingやGesture Readingに取り組みました。絵を見て英語で表現する活動では、初めは「見えるもの」の説明が中心でしたが、次第に「きっと友達だ」「幸せそう」など、生徒自身の考えや想像が英語に表れるようになりました。
Gesture Readingでは、1学期はたどたどしかった生徒たちも、2学期には笑顔も見え、ジェスチャーも大きく楽しそうに発表するようになりました。発表が終わったらGoogle Formでアンケートを取り、声の大きさ、目線、ジェスチャーなどの評価項目や、「〇〇くんの〇〇が良かった」など、良かったところを具体的に評価。その場で共有することで、みんなで振り返りができるようにしていました。
今年度から勤務している小学校では、「まずは英語を好きになってもらおう!」「英語好きのまま中学校に送りたい」という思いで授業を行っています。
フォニックス指導では「bbbbビー」をリズムに乗せて行い、歌ではYouTubeのSinging WalrusやBTSの「Dynamite」、Pokedanceなどを活用。BTSの「Dynamite」はサビの4行だけを熱唱し、他はリズムに乗って楽しみます。
また、小学校英語教科書の発表は一人で行うものが多い中、「一人だと怖い」という児童が多いことから、ダイアログやグループ発表を取り入れました。みんなで協力して大きな声や笑顔で発表ができ、前年度「発表が嫌い」と言っていた児童も、グループでの発表には安心して参加できるようになりました。
さらに、AIでご褒美シールを作ったり、Super Mario Classroom Blastを復習活動に活用したりと、子どもたちが「もっとやりたい!」と思える仕掛けも紹介されました。
「未来をつくる子どもたち その子どもを育てている私たち」という学校目標の言葉を胸に、未来ある子どもたちを使命感をもって育てていきたいという思いが伝わる発表でした。
北原先生より講評
生徒の変容、自分の考えを入れるようになったという変化をスムーズにさせるには、I think, I’m sureのように複文にするといいよ、と教えてあげると良い。
ジェスチャーリーディングすごかった。
Googleフォームでの評価は短く見せられるから良い。生徒にも送れることがいい!(生徒は自分へのプラスコメントを保存することができる)
ボンゴボンゴの代わりにループサウンドトラックを使うというアイデアも良い。速さを変えられるのもいい。
Gについては、ソフトGジュジュジュジュGから教える方が自然。CについてもソフトCススススCが先。アルファベットフォニックスでcとgは「ク」「グ」ではなく、「ス」「ジ」から教える方が生徒の抵抗感が少ない。
最近は発表を1人でやるのが苦痛の生徒が増えているので、ペアや班でやるのもあり。人前での発表は「ひとり」発表ではなく、「グループ」発表にすることでハードルを下げている。
AIでご褒美シールはおもしろい。スーパーマリオのゲームもインターネットで手軽にできる。
テストで教科書通りの文は✖️というのはだめ。→この点は北原先生から教科書通りの文はダメとしないでむしろ音読の価値づけをするために教科書の文を書けるようにする方が良いとアドバイスがあった。
参加者の声
S松先生のこれまでの歩みを伺い、その多様な経験と行動力に驚いたという声が多く寄せられました。
私立高校で数年経験した後、東大に電話をして授業見学を申し込まれ、非常勤講師をされることになる。その後、青年海外協力隊としてマーシャル諸島へ。生成AIによるイラストで、紙飛行機が飛び交う荒れた教室の様子を描かれていましたが、そこから状況を打破するために、ご自身で東京大学教育学部に電話をして相談し、授業を参観されたという行動力に、強く感銘を受けました。
海外青年協力隊でマーシャル諸島へ行かれた経験、2回の育休、そして小学校勤務と、置かれた環境が変わっても、その場所で力を発揮し、花を咲かせていくお姿に、勇気をいただいたという感想もありました。
中学3年生のGesture Readingの映像では、生徒が生き生きと活動する姿が印象的でした。飛び込みの学年であっても、これだけ楽しく活動できるようにできるのだと感心したという声がありました。
また、Gesture Readingの発表の際、Google Formを使ってその場でフィードバックする方法はとても参考になったという声もありました。発表の際の良かった点に注目し、生徒の名前を出して具体的に記述させ、それを皆で共有することで、褒められた生徒の意欲が高まるとともに、他の生徒もその後の活動に意欲的に取り組めるのではないかと感じたとのことでした。
小学校で、一人で発表するのを怖がる児童のために、教科書のモノローグをダイアログにしてグループで発表させる工夫についても、多くの学びがありました。子どもたちはグループで協力して楽しく活動でき、困っても助けてもらえる安心感を持って参加できているとのこと。「その手があったかと手を打ちました!」という参加者の声もありました。
AIを使ったご褒美シールやSuper Mario Classroom Blastなど、子どもたちが楽しめる授業づくりも参考になったという声が寄せられました。「アイデア豊富で児童・生徒を飽きさせず、力をつけさせようとICTも駆使しながらやっているのがわかりました。エネルギーを感じました」との感想もありました。
そして、S松先生の発表で一番印象に残ったこととして、「先生ご自身が本当に楽しそうに発表してくださったこと」を挙げた参加者もいました。生徒が英語を好きになるように、楽しい授業になるようにしようと、新しいものを積極的に取り入れて常に行動されているエネルギーを強く感じたとのことでした。
飛び込みの中学3年生の授業でも、小学校でも、「できない」ではなく、「やってみよう」という前向きな気持ちと実践力に、「私もできることを一つずつやっていこう」と勇気をもらった発表となりました。
実践発表③ 千葉県柏市立中学校 S藤先生
「北原メソッドで3年間育てた軌跡~発音、リンキング、イントネーションの上達~」
内容
S藤先生は、授業づくりに悩みながら模索していたところ、研修会で北原先生と出会い、ベーシックダイアログを体験して「ビビビときた」のが転機となりました。「毎月参加できる人」という条件に、「千葉からなら電車一本で行ける!」と勇気を出して手を挙げ、friendsメンバーになりました。
中学校、小学校と長年講師をしてきましたが、「生徒を育て上げたい、指導を積み上げたい」との思いから教員採用試験を受け、現在は北原メソッドで1、2、3年と継続して指導されています。
今回の発表では、念願かなって初めて3年間持ち上げた現在3年生の生徒について、発音、リンキング、イントネーションがどのように上達してきたのか、同じ生徒の3年間の映像を比較しながら紹介されました。
指導のベースになっているのは、AパターンでのBasic Dialogで、1学期間に60回ほど実施。th、f、v、r、lなど日本語にはない音や、リンキング、イントネーションなどを継続して指導してきました。
trが出てくると「ちゅるちゅる、ちょろちょろ、ちゃらちゃら」、drは「じゅるじゅる、じょろじょろ、じゃらじゃら」と指導。また、lとrの発音の違いについては、口の図や舌の位置、鏡などを使って細やかに説明、指導しています。
1年生の1学期にはthの発音など細かいところに課題があった生徒も、3年生では自然なスピード、正しく自然な発音で音読できるようになりました。1年生、2年生、3年生と学年が上がるごとに、発音やリンキング、アクセントなどの成長が顕著に見られました。「北原メソッド」は、①発音指導→②音読→③発表→④フィードバックというサイクルで成長を可視化し、生徒自身が「できるようになった!」と実感できるものです。
また、「BeautifulにはBeautifulな響きがある。SadにはSadな響きがある」と、言葉に思いを込めることの大切さも伝えているとのことでした。
生徒の変容として、6割の生徒が英語嫌いで入学したものの、9割以上が「英語好き」「英語の授業がわかりやすい」と回答。英検3級以上の取得率も高く、今後受検したいと考えている生徒を含めると、3級以上が93%に達するとのことでした。
3年生の修学旅行では、「外国人にインタビューする」という活動で、あるグループは15人もの外国人と交流することができました。そのグループの中には、英語の授業にほとんど参加できていなかった生徒もおり、満面の笑みで他者とのコミュニケーションを楽しむ姿が見られました。
3年間、データ、生徒目線、理論にしっかり基づいた指導を心がけてきた、その集大成となる発表でした。
北原先生より講評
ちゅるちゅるじゅる…が素晴らしい!北原先生は自分の頭をなでるジェスチャーで「ちゅるちゅる」と言っていた(笑)。train は単語の頭なので比較的発音しやすいが、country など単語の最後にくるtr もきちんと発音できていたので素晴らしい。
発音指導はALTに任せる、という人がいるが大間違い。発音指導をできるALTはほぼいない。自分で苦労して習得した(日本人の)先生が発音のコツなどを伝授するのが良い。
生徒が音読を自撮りして提出する課題において、顔全体ではなく口元を下から映している生徒がいたが、口元がよく見えるし、教師が余計なとこに目がいかず集中して口元を見れるので良いと思う。
「音声指導が読解力、発表、語彙習得すべてを底上げする」→その通り!!
「銀河鉄道の夜」を発表した赤坂中生徒は全員10箱読んでいた。結果評定1,2はゼロだった。
参加者の声
3年間持ち上がりで指導された生徒が、発音、リンキング、イントネーションを上達させてきた様子を映像で見ることで、生徒の成長がよくわかる発表でした。「発音もどんどん良くなっていく生徒たち。日頃からしっかり指導しているのがわかります」という声がありました。
熱心に「北原メソッド」「北研例会」に学び、生徒に実直に対峙して継続指導をされた成果が、しっかりと映像とレポートに出ていました。
日本語と違う発音の徹底指導では、正しい発音、イントネーション、リンキングなどにこだわり、厳しい中にも温かく生徒を励ましサポートする姿勢は確実に子どもたちに伝わっている、先生の思いを受けて生徒も成長していることがわかったという感想がありました。
先生らしく発音のポイントを指導されているところも印象に残りました。「ちゅるちゅる、ちょろちょろ、ちゃらちゃら」といった表現や、l、rの舌の位置を具体的に示すなど、細やかな発音指導が参考になったという声もありました。
また、あどけない面持ちで英語口の意識が薄かった生徒が、思春期に入っても英語を話すことに抵抗を感じることなく、舌や唇の使い方を身につけていく様子が素晴らしかったという感想もありました。
徹底した発音指導と音読指導が、音読がなめらかになる、暗記が速くなる、語順が理解できる、スピーチのリズムが英語らしくなる、自分の発音に自信を持てるようになるといった成果につながり、音声指導が読解、発表、語彙習得のすべてを底上げすることを感じたという声もありました。
「少しでも早く指導力を上げたい、より良い英語教師になりたい」と実践に励まれるS藤先生のお話に共感するとともに、大きな刺激を受けたという参加者もいました。
3年間、発音、リンキング、イントネーションにこだわり、継続して指導することで生徒が着実に成長していく姿から、改めて音声指導の重要性を感じる発表となりました。
実践発表④ 長野県小諸市立中学校 H先生
「『チャレンジ英和辞典』を使った辞書指導」
内容
H先生は、大学卒業後、英語教材を作る仕事に約20年間携わり、その後42歳で教員に転身。22年間中学校英語科教員を務め、今年度がラストイヤーとのことでした。
現在の勤務校では、受け持つ2年生35人のうち、4月当初に辞書を持っている生徒はわずか2人。そこで「教員が生徒分用意すればいい」と35冊の辞書をそろえ、授業ですぐに使える環境を整えました。
「辞書はともだち、復習はいのち」を合言葉に、1時間目は北原先生の「辞書指導CD-ROM」を使って辞書の引き方を指導し、2時間目からは毎時間10~15分、辞書を使う帯活動を行っています。
今回の発表では、まず参加者が中学2年生になったつもりで、H先生の実際の授業を体験しました。
「辞書で単語を探す⇒フレーズを探す⇒フレーズを使った例文を見つける⇒ノートに写す⇒先生に点検してもらう⇒学習したフレーズを使ったオリジナル作文⇒先生に見てもらう」という流れで活動が進みました。
例えば、lookとlook forを辞書で引き、見つけたら立つ。教師は引けた順を数え、「Help each other.」と声をかけ、まだ見つけられていない生徒を助けさせます。全員が引けたら例文を読み、ノートに例文を書く。オリジナル文が書ける人は書き、書けない人はまず辞書の例文を写し、その後さらにオリジナル文にチャレンジします。
takeでは、品詞や意味を確認するだけでなく、take a bus、take a walk、take picturesなど、どんな熟語があるかにも注目させます。
また、「辞書引き」を「作文力」につなげるために、辞書の例文をノートに書いて先生のチェックを受け、読み終わったら次はオリジナル文を作ります。教師は〇をつけ、ポイントを添削し、「必ず生徒の目を見て、ひとりひとりほめる」個別評定を行っています。
H先生によると、「辞書にある単語を見つけること」「その例文を写すこと」はどの生徒でもでき、その次にオリジナル文を書かせるようにすると、めきめきと力がついていくとのこと。辞書の例文もすばらしいので、音読するのも楽しく、発音もよくなると話されました。
授業の映像では、生徒が「北原先生ありがとう!」と言いながら嬉しそうに辞書を手に取る様子や、早く単語を見つけて一番に立ちたい、一番にH先生に英作文をチェックしてもらいたい、一番に〇をもらいたいと意欲的に取り組む様子が紹介されました。
足の不自由な生徒も「今日も辞書やりますか?」と楽しみにし、最近では一番に英文を持ってくることも増えたとのことでした。家庭環境が大変な生徒や、障害のある生徒、英語に苦手意識をもった生徒も、みんなと一緒に競い、学び、評価され、モチベーションを上げています。
H先生は、「辞書」は社会では逆風だが、生徒にとっての辞書の存在、辞書を使ってできることの大きさを考えると、その意義はとても大きいと話されました。
北原先生より講評
メールで辞書指導について書いてくれたので、今回の研修で発表を依頼した。
まず、生徒たちの中につまんなそうな生徒がいない。
中2でもこどものように尻尾を振ってついてきている。こんなふうにやれば良いとわかったと思う。
辞書指導がないとどうしようもない。
辞書指導がなくなったら、寂しいだけではなく、どうしようもない!しかし先生方の工夫、努力によっては復活するかもしれないよ!紙の辞書でないとできないことがある!電子辞書やタブレットでの検索、等では単語の意味調べが単一的で広がりにくい。イメージしづらい。やはり辞書は紙だ!神だ!
紙の辞書がなくなることについて皆さんでムーブメントを起こしてほしい。
H先生の辞書指導への熱い思いに感服、みんなもあきらめず取り組み続けてほしい。
参加者の声
H先生の辞書指導を、実際に生徒役になって体験できたことが印象に残ったという声が多く寄せられました。
「辞書はともだち、復習はいのち」という合言葉に、「なるほど!さすがです!」と納得したという感想もありました。H先生の物柔らかな話し方と、テンポよく進む授業に引き込まれ、「私自身も中学2年生の生徒になったような気持ちで楽しく体験することができました」という声もありました。
「辞書で単語を探す⇒フレーズを探す⇒例文を見つける⇒ノートに写す⇒先生に見てもらう⇒オリジナル作文」という流れについて、「辞書を引いて単語の意味を確認したら終わり、という習性を打破することができると思いました」という感想がありました。毎回「例文も読みなさい」と言い続けるより効果があり、オリジナル文も作りやすいと感じたとのことでした。
また、生徒が本当に楽しそうに活動に取り組む様子も印象的でした。先生に授業中、一対一で例文の発音や書き取り、さらにオリジナル作文を確認してもらえることを、生徒が本当に嬉しく感じているのがわかったという声がありました。
できた生徒から並び、一人一人に直接褒め言葉をかけながら丸付けをする。その姿から、子どもたち一人一人がH先生との関わりを求めていることが伝わってきたという感想もありました。特に、車椅子の生徒がいち早く並ぶ姿には、とても感動したとの声がありました。
「生徒は辞書をもっていないので、教師が1クラス分35冊を用意する」という行動からも、H先生の英語教育に対する本気度が伝わってきたという感想がありました。
また、「自律的な学習者を育てるためには辞書指導は不可欠です。私も『辞書指導』を推進していきたいと強く思いました」という参加者の声もありました。
H先生ご自身がチャレンジ英和辞典を愛し、「辞書はともだち、復習はいのち」を毎時間実践しているからこそ、生徒たちも辞書を大切にし、楽しんで辞書引きをしている様子が伝わってきたという感想もありました。
英語を通して生徒とつながり、情熱をもち、まごころをもって、生徒一人一人をよく見て可愛がる。そうしたH先生の姿勢と、辞書を中心に生徒の学ぶ意欲を引き出す実践から、多くのことを学ぶ発表となりました。